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【緊迫化する南シナ海】比、後ろ盾で中国に対抗 放水砲、将兵に命の危険

 フィリピンのマルコス政権は南シナ海で本格的な4カ国演習に踏み切る。日米豪の軍事力を後ろ盾に、中国に対抗する狙いは明白だ。南シナ海のアユンギン礁では、フィリピン海軍将兵が乗る補給船が中国側の高圧の放水砲で直撃され、死者が出てもおかしくない状況に陥っている。中国との武力衝突に発展しかねないとの危機感も広がる。

フィリピンの首都マニラで、ブリンケン米国務長官との会談に臨むマルコス大統領=3月19日(ロイター=共同)
フィリピンの首都マニラで、ブリンケン米国務長官との会談に臨むマルコス大統領=3月19日(ロイター=共同)
南シナ海・アユンギン礁のフィリピン軍拠点向け補給任務に参加する沿岸警備隊の船=3月4日(ゲッティ=共同)
南シナ海・アユンギン礁のフィリピン軍拠点向け補給任務に参加する沿岸警備隊の船=3月4日(ゲッティ=共同)
フィリピン・パラワン島西方で共同運航するフィリピン海軍と米海軍の艦船=2023年9月(フィリピン海軍提供、共同)
フィリピン・パラワン島西方で共同運航するフィリピン海軍と米海軍の艦船=2023年9月(フィリピン海軍提供、共同)
フィリピンの首都マニラで、ブリンケン米国務長官との会談に臨むマルコス大統領=3月19日(ロイター=共同)
南シナ海・アユンギン礁のフィリピン軍拠点向け補給任務に参加する沿岸警備隊の船=3月4日(ゲッティ=共同)
フィリピン・パラワン島西方で共同運航するフィリピン海軍と米海軍の艦船=2023年9月(フィリピン海軍提供、共同)

 マルコス大統領は昨年1月の訪中の際、南シナ海問題を対話で解決する方針で習近平国家主席と一致。中国のテレビ局に対し、問題は地域の当事国間で解決すべきで、米国の仲介は拒否すると断言していた。だが首脳会談後も南シナ海で中国の妨害が激化。対中姿勢を硬化させ、日米豪との連携強化にかじを切った。
 今年3月5日と23日には、アユンギン礁のフィリピン軍拠点に向かう補給船が中国海警局の船から放水砲を受け、計7人の軍人が負傷した。ブラウナー軍参謀総長は23日の放水砲について、人を吹き飛ばせるほど水圧が強力だったとし、軍人1人が船の壁に衝突したと説明。「もし壁がなかったら、水の勢いで船外に放り出されてしまった可能性がある」と訴えた。
 フィリピン政府は23日の妨害を受け、自国の立場を20カ国以上が支持したと強調した。国家安全保障会議のマラヤ次長は「フィリピン軍人に放水砲を浴びせて負傷させる中国の立場に支持を表明した国は聞いたことがない。中国の侵略に対し具体的な行動を取る」と警告していた。
 反中世論が高まる中、マルコス氏は25日、領土保全と平和を脅かす「深刻な挑戦」に対抗するため、海上安全保障を強化する大統領令に署名した。だが姉のアイミー・マルコス上院議員は、安保強化のため「外国から寄付や貢献」を受けるとした条文を問題視。「外国の干渉」を招き「ウクライナやガザのような終わりのない紛争」をあおりかねないと批判した。
 中国寄りだったドゥテルテ前大統領の報道官を務めたロケ氏は26日、アユンギン礁のフィリピン軍拠点になっている座礁した老朽艦に補修資材を持ち込まないとの合意を中国側と過去に交わしていたと述べた。中国は軍拠点に生活必需品を運ぶ補給船1隻に限り容認する方針も示している。中国と対立を深めるマルコス政権の外交安保路線を巡り政界に亀裂が生じる可能性もある。(マニラ共同=佐々木健)

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