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【ジェンダー平等目指す自治体】格差ない社会、この町から 人口減に危機感、続く模索

 待ったなしの人口減少への危機感に背中を押され、各地でジェンダー平等に向けた取り組みが動き始めた。8日は国際女性デー。女性や子どもにも選ばれる道を模索する過疎の町、格差解消に向け、リーダーシップを発揮する首長…。誰もが生きやすい社会への歩みは緒に就いたばかりで、専門家は「足元の格差に目を向けることが第一歩となる」と指摘する。

北海道浦幌町の中学校で開かれた「みらいワークショップ」=2月
北海道浦幌町の中学校で開かれた「みらいワークショップ」=2月
北海道浦幌町の中学校で開かれた「みらいワークショップ」で生徒に語りかける桜井彩乃さん=2月
北海道浦幌町の中学校で開かれた「みらいワークショップ」で生徒に語りかける桜井彩乃さん=2月
北海道浦幌町の中学校で開かれた「みらいワークショップ」=2月
北海道浦幌町の中学校で開かれた「みらいワークショップ」で生徒に語りかける桜井彩乃さん=2月

 ▽切実
 「女性は仕事も子育てもしなきゃいけない。男性は育休が取れない」「性別に基づく『なぜ?』はいっぱいあります」。人口約4千人で過疎が切実な問題として迫る北海道浦幌町。2月、中学で開かれた「みらいワークショップ」で、ジェンダー平等に取り組む団体「GENCOURAGE」代表の桜井彩乃さん(29)が生徒に語りかけた。
 桜井さんの話を聞き、生徒らは少子高齢化がピークを迎える2040年の町の将来や、自分ができることを議論。2年の田村洸翔さん(14)は「男女とも楽しめるスポーツ大会を開きたい」と笑顔を見せた。
 町では地域全体で子どもを育てようと、農家や漁師の仕事を体験し、大人と交流するプログラムを導入。町の特性を知り、地元への愛着もはぐくまれている。
 きっかけは07年、町で唯一の高校の募集停止が決まったことだ。当時町職員だった井上亨町長(49)は「子どもが戻ってくる魅力ある古里にしなくては、と危機感があった」と振り返る。やがて「若者や女性を尊重する空気」が広がり、20代のUターンや転入者が増えたという。
 影響は町政にも及ぶ。23年の統一地方選で、20~30代の女性町議3人が誕生した。当選後に出産し、今年1~2月に委員会へオンライン出席した本間里奈町議(30)は「議会でも町でも、多様な立場や価値観が生かせるようになれば」と語る。
 ▽気付き
 国内の23年の出生数は速報値で過去最少の75万人台となり、少子化と人口減はとどまるところを知らない。「町が消える」との焦りから対策を講じる自治体もある。
 10~20代の女性の転出が際立つ富山県南砺市は、24年度からジェンダー・ギャップ解消に向けた部署を設置する。参考にしたのは、行政や企業だけでなく地域一体となって格差是正に取り組む兵庫県豊岡市だ。豊岡の担当者による講演会で学び、連携を続ける。
 南砺市の課題の一つは「地域運営」。21年時点で市内に354ある町内会のうち、女性会長はわずか1人だ。「意欲があっても、お茶くみだけでは意味がない。女性参画を阻む構造を深掘りする。多様性や寛容性なしには地域の維持は難しい」(担当者)として、26年までに10人に増やすことが目標だ。
 三重県では一見勝之知事が先頭に立ち、対策を進める。県の人口減少対策の柱として男女の格差解消を掲げ、働く女性のワークショップに出席して課題を把握。24年度は転出した女性にもヒアリングし、魅力ある地域づくりへの鍵を探る。
 日本総合研究所の藤波匠・上席主任研究員は「『女性の力を活用しよう』という社会全体の流れに、ようやく一部地域が気付き始めた。女性や若い人が定着することで、モデルケースとなってほしい」とする。性別による役割分担が根強い地域はいまだ多く「自分の町にジェンダー・ギャップがあると気付くことが第一歩だ」と話した。

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