あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 読み応えあり

【米、対中関税引き上げ検討】鉄鋼業保護重視で強硬姿勢 大統領選対策の色合いも

 バイデン米政権が、中国産の鉄鋼製品などに対する制裁関税の引き上げを検討すると表明した。大量生産された中国製品の流入による値崩れがもたらす自国産業への影響を重視し、鉄鋼業などを保護する姿勢を鮮明にした形だ。11月に控える米大統領選をにらんだ選挙対策の色合いもある。

中国の過剰生産を巡る構図
中国の過剰生産を巡る構図

 ▽火種
 日本の11・4倍、米国の12・6倍―。2022年の中国の粗鋼生産量は10億トンを超え、日米を圧倒。世界全体の過半のシェアに達する。中国は経済成長とともに特に2000年代以降に生産能力を増やしてきた。新型コロナウイルス禍やその後の不動産不況により足元では生産過剰が目立つ。
 中国で消費しきれない余剰製品が輸出に回れば、輸出先の市場で過度な価格低下をもたらしかねない。米国や欧州連合(EU)が神経をとがらせるほか、日本の鉄鋼関係者も「中国が生産を抑制せず、国際的な鉄鋼価格が低迷し国内の市況にも影響するのが最悪の事態だ。労務費や物流コストの上昇を吸収できない恐れがある」と懸念する。
 過剰生産の問題は幅広い製品に及んでおり、中国勢が台頭する電気自動車(EV)産業の補助金を巡ってEUが調査を始めるなど、貿易摩擦の火種となっている。
 ▽屋台骨
 「大統領は鉄鋼が米経済の屋台骨であり、安全保障の基盤だと理解している」。17日にホワイトハウスが関税引き上げを発表した資料には、鉄鋼労働者に秋波を送るような表現が並んだ。今回の追加関税を巡る発表は、バイデン氏が米東部ペンシルベニア州の全米鉄鋼労働組合(USW)本部で演説する直前というタイミングで行われた。
 同州は大統領選の結果を左右しかねない激戦州の一つ。トランプ前大統領はこれまでの選挙戦で、中国製品に高い関税を課す方針を示しており、バイデン氏も産業保護の姿勢を明確に打ち出すことで票集めにつなげる狙いがあるとみられる。
 バイデン政権が実際に関税引き上げまでは踏み切らない可能性がある一方、中国側が猛反発し、互いに制裁の動きをエスカレートさせる危うさもはらむ。経済大国間の対立が深まれば、企業活動の制約のほか、生産コストの増加などをもたらしかねず、世界経済の足かせになる恐れもある。(ワシントン、東京共同=建部佑介、小林まりえ)

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む