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【現在地】「かいごマガジン そこここ」の一条道さん 話せなかった思いを形に

 母を介護しながら派遣社員としてフルタイムで働く一条道さんは、雑誌「かいごマガジン そこここ」の発行人でもある。介護する人向けに2019年に創刊。シンプルなデザインの表紙を開くと、家族介護の現場を取材した記事あり、少し風変わりなヘルパーが主人公のクスリと笑えるマンガあり、料理レシピありと多彩な内容が魅力だ。

「何冊か購入して、介護中の知り合いの方に手渡してくださる人もいます」と話す一条道さん
「何冊か購入して、介護中の知り合いの方に手渡してくださる人もいます」と話す一条道さん

 「10年前に父が亡くなり、持病があって目の不自由な母を私が介護することになりました。母のケアの態勢が整った5年ほど前、何か自分でやりたいと思ったんです」
 以前、雑誌編集の仕事をしており「介護についての雑誌だったら自分に作れるかもしれない」と考えた。「私は30代後半で母の介護をするようになりましたが、同世代ではまだ少なく、わざわざ誰かに話してこなかった。のど元までたまっていた自分の中のいろんな思いを吐き出したのが、この雑誌と言えるかもしれません」
 当事者に取材依頼する際はじっくり時間をかける。断られることも多いというが「介護していると、どうしても社会から孤立しがちです。取材依頼を受けるか考えることそのものが、社会とのつながりを感じる機会になった、と言っていただけたこともあります」。
 ゆったりとした刊行ペースで、22年に第2号を出した。介護する人も受ける人も穏やかな笑顔を見せているのが印象的だ。「本当に一瞬を切り取らせてもらっているんだな」と実感する。
 個人書店やオンラインで販売し、福祉の現場で働く人やデザイン関係者ら、幅広い読者に届いているという。「声を上げていないだけで、そこにもここにも誰かを介護している人はいます。そんな人たちにもっと届けていけたら」と願う。

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