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微細プラ、雲や雪から発見 「人体影響さらに」懸念も 研究例少なく、解明急務

 海洋汚染が大きな問題となっている微細なプラスチック片「マイクロプラスチック(MP)」が、雲や雪の中からも見つかった。早稲田大の大河内博教授(環境化学)や北見工業大(北海道)の大野浩准教授らの研究で分かった。大気中ではより小さく、人体に取り込まれた場合の影響は大きいとの指摘があるが研究例は少なく、実態解明が急務だ。

北海道内の雪から検出された「マイクロプラスチック」(大野浩・北見工業大准教授提供)
北海道内の雪から検出された「マイクロプラスチック」(大野浩・北見工業大准教授提供)
富士山頂で雲水を採取する早稲田大・大河内博教授らの研究グループ=2023年8月(同教授提供)
富士山頂で雲水を採取する早稲田大・大河内博教授らの研究グループ=2023年8月(同教授提供)
大気中のマイクロプラスチック(MP)の考えられる発生源と影響の例
大気中のマイクロプラスチック(MP)の考えられる発生源と影響の例
北海道内の雪から検出された「マイクロプラスチック」(大野浩・北見工業大准教授提供)
富士山頂で雲水を採取する早稲田大・大河内博教授らの研究グループ=2023年8月(同教授提供)
大気中のマイクロプラスチック(MP)の考えられる発生源と影響の例

 MPはプラスチックごみが波や紫外線などで壊れることによって生じる粒子で、大きさが5ミリ以下のもの。有害な化学物質を吸着する性質があり、海洋生態系への影響が懸念されるほか、人間も魚介類を通じて摂取している恐れが指摘される。
 大河内教授らの研究グループは2021~22年、富士山頂など3地点で採取した雲水にMPが含まれていることを野外観測で初めて実証した。MPが紫外線劣化により水をはじきにくくなり、雲の核となっている可能性がある。有機物などを表面に吸着していると、さらに核になりやすくなるという。
 MPは紫外線で劣化する際、温室効果ガスを排出する。一方で雲の形成を促進して太陽光を地表に届きにくくし、地球温暖化の予測モデルを不確実なものにしている可能性も。発生源ははっきりしないが陸のほか「日本では近海から台風や冬の北西からの季節風で巻き上げられた海洋MPが有力ではないか」と推測する。
 雪からMPを発見したのは、氷雪学を専門とする大野准教授。21~23年、世界自然遺産の知床五湖や旭岳(2291メートル)など、道内9カ所で採取した雪を分析すると、全地点で検出された。
 知床など人の生活圏外では、プラスチック容器に使われるポリエチレンなど0・06ミリ以下のごく小さいものが中心で、大気によって運ばれたと考えられるという。一方、都市部では合成ゴムや比較的大きなMPが見つかり、車のタイヤなど現地由来の可能性が高い。
 大河内教授によると、大気中のMPは0・1ミリ以下で海洋と比べて小さい。海洋と同様に日常的に使われるプラスチックが主だが、上空にあることから強い紫外線にさらされ劣化が早い。MPが呼吸で取り込まれると、肺に蓄積されるほか、より微細なものは血液中に入り込み全身に広がると考えられ、飲食物に混入したものとは異なり体外に排出されにくい。
 ただ大気中のMPに言及した論文が初めて登場したのは16年。研究手法が統一されておらず、大気中にどのようなサイズのMPがどれほどあるかなど、実態の把握が進んでいない。大河内教授は「まだまだ分からないことが多い。特に健康リスクについて明らかにし、対処を考えていきたい」と話している。

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