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【米大統領選挙】立ち止まりレーガンに学べ 明から暗、政治の変質象徴

 明から暗、米国政治の変質を象徴する2人の政治家がいる。レーガン元大統領(故人)とトランプ前大統領だ。
 1984年の大統領選で、再選を目指した共和党のレーガン氏が掲げたテーマは「朝」であった。陣営のテレビ広告は国民にこう呼びかけた。「米国に再び朝が来た」
 明るい表情を見せる市民らの日常生活に重ね、ナレーションが減税や低インフレを実現したレーガン政権の実績を強調。「より誇り高く、より強く、より良い米国」を約束した。レーガン氏の記念財団によれば、同氏はこれを「いたく気に入っていた」という。
 ちょうど40年後の今、11月の大統領選に向け共和党の指名を確実にし、返り咲きへ猛進するトランプ氏はこう叫んでいる。
 「米国は世界の笑いもの」「アメリカンドリームは死んだ」「バイデン(大統領)はいかさま師だ」。民主党の現職、バイデン氏の諸政策を批判するためで、レーガン氏の政権維持戦略と状況が違うのは理解できる。
 それにしても悲観主義と悪口雑言にまみれたトランプ氏の演説は、「闇と絶望の暗黒郷」(ワシントン・ポスト紙)そのものだ。その暗さは米国の自信の揺らぎでもあろうが、レーガン政権も発足時はばら色ではなかったことを想起しておきたい。
 慢性的な財政赤字で経済は勢いを失い、当時のソ連との対立は先鋭化、就任間もない81年にはレーガン氏自身の暗殺未遂事件も起きた。しかし圧倒的強さで再選を果たしたレーガン氏は持ち前の楽観主義を貫き、米国復活の礎を築いた。
 そのレーガン政権で高官を務めたレーマン元海軍長官が最近、米ウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿、注目を集めている。
 「レーガンは絶対にトランプに投票しない」と題した寄稿は、トランプ氏がウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領や、イスラエルを攻撃する親イラン民兵組織、ヒズボラを称賛したことを批判。米国の分断について「トランプ氏は民主党を、打ちのめすべき悪党扱いしている」と指摘し、党派を超えて緊密な関係を深めたレーガン政治の教訓を示した。
 トランプ氏は立ち止まってレーガン氏に学んでほしい。現状否定で対立をあおれば有利との計算だろうが、市民の力を結集して「米国を再び偉大に」することはできない。
 一方バイデン氏は、共和党穏健派や無党派の反トランプ層を取り込めず苦戦中だ。レーマン氏はバイデン氏を「政策綱領を社会主義者であるバーニー・サンダース(上院議員)に譲り渡した」と指摘、第三の政党候補を支援する考えを示した。
 激戦が必至の6州の支持率調査でトランプ氏にリードを許している焦りからか、バイデン氏はトランプ氏批判のトーンを強めている。だが国民が求めているのは非難合戦ではない。次世代へ向けた明るいビジョンを言葉にできる指導者だ。(共同通信編集委員 半沢隆実)

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