【世界の街から】熱気に包まれて
絵本の中からそのまま登場人物たちが飛び出してきたかのような世界観、完成度の高い演技、激しいサンバのリズムとダンス。2月、南米最大の真夏の祭典ブラジル・リオデジャネイロのカーニバルの取材に初めて訪れ、想像をはるかに上回る迫力に圧倒された。
大規模パレードが行われる会場「サンボドロモ」。数千人が参加する各チームはテーマに沿った巨大な山車や豪華な衣装をそろえ、練習を重ねる。わずか700メートルを練り歩く間にその集大成を見せつける。審査で順位が決まるため皆必死だ。
夜10時、大音量で流れる音楽に合わせパレードはスタート。出演者はもちろん、国内外から訪れたファンの熱量もすごい。花火も上がり、約7万人の観客が合唱し踊る。
パレードの脇で取材をしていて、自分まで渦にのみ込まれるような不思議な感覚を味わった。熱気に包まれ汗が止まらず、明け方に宿泊先に戻った後も眠れなかった。
市内各地では「ブロッコ」と呼ばれる野外パーティーも行われた。水着姿で踊る人であふれ、街じゅうがお祭り騒ぎになる。
カーニバルはカトリックの謝肉祭の行事で、復活祭(イースター)に先立つ40日間の四旬節の前に、肉を食べて楽しむという習慣に由来する。ブラジルをかつて支配したポルトガルや、アフリカから連れてこられた奴隷の音楽が元とされるサンバなどの文化が融合して独自のものに。1960年まで首都だったリオに多くのサンバ団体が生まれ、発展した歴史がある。
そのリオでは今年11月、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれる。貧富の差や老若男女を問わず一体となるカーニバルのような団結を見ることができるだろうか。(リオデジャネイロ共同=高木勝悟)