働く女性共感、ヒット続々 電子漫画DPNブックス
傍若無人に振る舞う女性を主人公にしたコメディー漫画「ワタシってサバサバしてるから」、応援していたスター俳優が引退して会社の上司になる「推しが上司になりまして」…。競争が激しい電子漫画業界で、ヒット作を連発している版元がある。「DPNブックス」は、働く女性に共感を呼ぶ作品づくりで、読者の心をつかんでいる。
出版科学研究所によると、電子漫画の市場規模は毎年拡大。2023年は4830億円に成長し、4418億円だった紙の漫画誌と漫画単行本の合計を初めて上回った。町の書店が減少している影響もあり、漫画は電子で読む動きが加速しているものの、各社から新作が毎月計約500作品も配信される現在、大手出版社以外がヒット作を生み出すのは容易ではない。
DPNブックスがオリジナルの電子漫画を制作し始めたのは17年。これまでに100作品以上を配信し、「ワタシってサバサバしてるから」はNHKで、「推しが上司になりまして」はテレビ東京でドラマ化、着実に売り上げを伸ばしている。
「読者が求める漫画を作る。そのテーマを追い求めれば、読者からの支持が得られるはずと考えた」と語るのは責任者の坪内健一郎さんだ。DPNブックスは、女性向け健康情報サービス「ルナルナ」などを手がけるIT企業「エムティーアイ」が展開する事業の一つ。そのため、漫画のメインターゲットとする20~40代女性に対しても徹底的な市場調査を実施している。編集部員が20~30代の女性で構成され、読者の感性に近いことも強みだという。
女性読者に好評なのが「お仕事漫画」だ。会社員ならば誰もが感じる、同僚や上司へのもやもやした感情などを作品に取り入れ、読者に「あるある」と共感してもらう。さらに「勧善懲悪の要素を入れる」と明かすのは、事業の立ち上げから関わる編集者の広兼はるかさんだ。「例えば不倫した男女が最終的にぎゃふんとなって、読んでいてスカッとする。こういうものがお金を払ってでも続きが読みたいと思ってもらえる」
漫画が紙から電子に変わっても、好まれるテーマは変わっていない。DPNブックスの編集者で、人事部の女性が社内の問題を解決していくヒット漫画「社内探偵」の原作も手がけているegumiさんは、デジタルシフトを進める複数の出版社から原作の依頼を受ける。「読者をスカッとさせるんだけど、悪役や嫌われ者が、何でそんな人になったのかに私自身が興味がある。電子漫画が、人間を考える一助になったらうれしいです」と話した。