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【日産が下請法違反】違法性認識なく慣例化 公取委「業界の問題」

 過去最高となる30億円超の下請法違反行為が認定された日産自動車は、下請け業者と協議した上で支払代金の減額幅を決めていた。日産側は違法性の認識を欠いたまま「割戻金」名目で請求し、下請け側も拒否の姿勢を示さず、交渉のテーブルに着くのが慣例になっていたとみられる。公正取引委員会は「業界全体の問題だ」と強調。専門家は日産の対応を批判しつつ、取引の打ち切りを恐れる中小に対しても声を上げる姿勢を求めた。

日産自動車グローバル本社にある社名表示=7日午後、横浜市
日産自動車グローバル本社にある社名表示=7日午後、横浜市
下請け業者への支払代金減額を巡る日産自動車への再発防止勧告について、公正取引委員会が開いた記者会見=7日午後、東京都千代田区
下請け業者への支払代金減額を巡る日産自動車への再発防止勧告について、公正取引委員会が開いた記者会見=7日午後、東京都千代田区
東京都千代田区にある公正取引委員会の銘板と、横浜市の日産自動車グローバル本社にあるロゴ
東京都千代田区にある公正取引委員会の銘板と、横浜市の日産自動車グローバル本社にあるロゴ
日産自動車に対する再発防止勧告について記者会見する公正取引委員会の担当者=7日午後、東京都千代田区
日産自動車に対する再発防止勧告について記者会見する公正取引委員会の担当者=7日午後、東京都千代田区
ピラミッドに例えられる自動車業界
ピラミッドに例えられる自動車業界
日産自動車グローバル本社にある社名表示=7日午後、横浜市
下請け業者への支払代金減額を巡る日産自動車への再発防止勧告について、公正取引委員会が開いた記者会見=7日午後、東京都千代田区
東京都千代田区にある公正取引委員会の銘板と、横浜市の日産自動車グローバル本社にあるロゴ
日産自動車に対する再発防止勧告について記者会見する公正取引委員会の担当者=7日午後、東京都千代田区
ピラミッドに例えられる自動車業界

 ▽天然
 「今回はいくら割戻金をいただけますか」。公取委によると、日産の担当者が下請け側に減額を持ちかけるのが慣行だった。決算期にコストダウンの目標を達成するため「問題意識を持たずに」(公取委担当者)金額を相談していたという。
 下請けの一部は公取委の調査に「受け入れなければいけないものだと思っていた」と説明したとされる。公取委は毎年、日産の下請けを対象に書面調査を実施。違法行為は数十年に及んだにもかかわらず、勧告につながる意見は聞かれなかった。
 日産社内でも問題視する声は上がらず、公取委の担当者は「まさに天然(ぼけ)の違法行為だった」とあきれたように語った。
 ▽「ゼロはない」
 下請け側は取引中止を恐れ、減額に従順に応じてきたが、業績が下がった時期などは「今回はゼロでお願いします」と、支払いを拒むこともあった。しかし、日産の担当者は「ゼロはないでしょう」と取り合わず、分割払いに変更するなどした上で減額を継続した。
 長年明るみに出なかった下請けいじめが発覚したのはなぜか。公取委は調査の端緒を明らかにしていないが、担当者は一般論として「好景気の間は受注が多いので大企業との関係を優先するが、新型コロナウイルス感染拡大で景気が悪化したり、原材料費が高騰したりすれば、減額に耐えられない下請けも出てくる」と指摘した。
 ▽ピラミッド
 自動車産業は日産やトヨタ自動車といった大手自動車メーカーを頂点に、車体の製造を手がける1次下請け、車体のパーツを担当する2次下請け、さらにねじやばねを製造する3次下請けというように、巨大なピラミッドに例えられる。下請けは安定した取引を期待できる半面、大手より弱い立場に置かれることから価格転嫁を言い出しづらく、結果的に違法行為が発覚しにくいという悪循環に陥りがちだとされる。
 自動車産業に詳しい経済ジャーナリストの町田徹氏は「法整備が進んだ中で減額強要を続けていたとは驚きだ。時代への適応に遅れたと言わざるを得ない」と日産の対応を厳しく批判する。「長年培われた関係があり、大手への依存体質から脱却するのは難しいだろう」としつつ、下請けに対しても「自動車産業は変革期にあり、製品だけでなく企業体質も問われる時代だ」と法令順守の意識改革を求めた。

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