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学習塾、面接官役に生成AI 向き合い方、現場で模索

 対話型人工知能(AI)「チャットGPT」で知られる生成AIが教育現場に導入されつつある。学習塾ではAIが入試の面接官役になったり、英会話の相手役になったりして生徒と受け答えする。一方、大学では学生のリポート作成などの利用をどこまで認めるか、判断が分かれる。
面接官役の生成AIと生徒の対話例タブレットの画面上で生成AIからの質問に回答する三井塾の生徒たち=2023年11月、東京都中央区
 「友だちと過ごす中であなた自身が特に大切だと思ったことは?」。タブレットの画面に面接官役の生成AIが投げかけた質問が映し出される。東京都江東区の中学2年、梅原孝太朗さん(14)は「協調性が大事」と回答を入力した。東京・日本橋の「三井塾」は2023年10月から教育ベンチャーのみんがく(東京)が手がける生成AIソフトウエアを実験的に取り入れ、高校入試の面接を想定した授業にも活用する。梅原さんは「AIの質問から友だちとの思い出を振り返り、自分の行動に欠けていた部分を考え、面接の回答の参考になった」と話す。
 授業には梅原さんら中学生の生徒6人が参加した。従来は塾講師が面接官役だが、AIなら人手はかからず、タブレットさえあればそれぞれ生徒が空いている時間に受けられる。三井慎太郎塾長は「引っ込み思案で人と話すのが苦手な生徒もいる。AIなら気軽に面接の経験を積める」と期待する。
 みんがくは23年3月に生成AIソフト開発を開始し、24年1月から販売を始めた。AIがうまく質問に回答できない場合があるため、改良も続けている。最高経営責任者(CEO)の佐藤雄太さんは「講師が少ない地方の塾の助けにもなる」と力を込める。
 大学は学生に生成AIの利用をどこまで認めてよいのか判断を迫られている。リポートや論文の課題をAIに作成させることを問題視し、「そのまま書き写して作成することは盗用に当たる」(群馬大)と、厳しい文言で注意する大学もある。
 武蔵大の庄司昌彦教授(情報社会学)が23年5月から6月に生成AIについて全国193の大学や学部を調査したところ、多かったのは「担当教員の指示に従う」だった。リポートや論文の作成で活用するのを「全面禁止」とも受け取れるのは17にとどまった。庄司教授は「禁止せず教員に判断を委ねても、現場は困惑するのではないか」と指摘する。
 庄司教授は生成AIが「それらしい答えを作り出す道具」と念を押した上で、リポート作成を原則、認めている。生成AIとの対話を通じて自身の思考を深めることに活用すれば役立つ上、そもそも社会で生成AIの利用が進む中、大学で使用させなければ卒業後に仕事をする際に不利になると考えるからだ。「生成AIを利用して優れたリポートになるなら使ってほしいが、責任は学生が負うことになる。ただ単に禁止するのではなく、向き合い方を教えるべきだ」と訴える。

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