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ウクライナ避難「学び」に影 浜松出身・清水さん、隣国で支援 「多角的援助が必要」

 東欧の地で、ウクライナから避難した子どもたちの教育支援に奮闘する浜松市出身の女性がいる。国際的な非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」に所属する清水奈々子さん(31)は現在、同国に隣接するルーマニアで駐在員として活動する。清水さんがこのほどリモート取材に応じ、ロシアとの戦争が長期化する中、「子どもの学習に影を落としている。まだ多くの支援が必要」と訴えた。

ウクライナから避難した子どもの教育支援に奮闘する清水奈々子さん(左)=15日、ルーマニア・コンスタンツァの公立学校(セーブ・ザ・チルドレン提供)
ウクライナから避難した子どもの教育支援に奮闘する清水奈々子さん(左)=15日、ルーマニア・コンスタンツァの公立学校(セーブ・ザ・チルドレン提供)
ルーマニア コンスタンツァ ブカレスト
ルーマニア コンスタンツァ ブカレスト
ウクライナから避難した子どもの教育支援に奮闘する清水奈々子さん(左)=15日、ルーマニア・コンスタンツァの公立学校(セーブ・ザ・チルドレン提供)
ルーマニア コンスタンツァ ブカレスト


 ウクライナとの国境の南にある都市コンスタンツァでは、戦地から逃げてきた子どもらを公立校で受け入れている。清水さんは首都ブカレストを拠点にしつつ学校に顔を出し、放課後学習に関する手配や心のケアに必要な人材確保などの調整役を担う。
 ウクライナの子どもたちは、同じく避難した同国の教師の指導のほか、インターネット配信の授業を受けている。ただ避難生活中の教師も多く、定期的な配信は困難な状況だ。ルーマニア語は母国の言語と大きく異なるため言葉の壁が大きく、教室や教員の確保も課題という。
 2023年3月に駐在所の勤務に就いた清水さん。1年間の活動を通し、避難した家族の考えに変化を感じ取る。「帰国を諦め、ルーマニアに根を張ると決断する人が増えた。情勢が安定しない以上、現実を受け入れざるを得ない」。父親や祖父母を残してきた母子が多く、戦闘状況を見極めながら父親らに会いに行くことはできるが、いまだに故郷が爆撃されたとの情報が入ることもある。避難生活には、拭えない悲壮感が漂う。
 そんな中でも、人のたくましさに出会う瞬間がある。体育や課外学習で両国の子どもが交流を深め、笑顔が増えてきた。子どもが外で遊ぶようになれば保護者も就労へ前向きになる。今後は子どもの進学支援や保護者の働き口の確保など、中長期的で多角的な援助が必要になるとみる。
 清水さんは高校まで浜松市内で育ち、これまでにケニアやアフガニスタンの支援活動に携わった。ルーマニアでの活動は6月ごろで一区切りになりそうで「つらい環境に置かれた子どもの存在を、多くの人に知ってもらうために発信を続けたい」と目標を掲げる。
 (浜松総局・岩下勝哉)

 セーブ・ザ・チルドレン 子どもの支援を展開する国際的な非政府組織(NGO)。1919年、第1次世界大戦の影響で飢餓に苦しむ子どもを救うことを目的に英国で創設された。日本組織は86年に設立した。行政や地域社会と連携して保健、教育分野などで活動を行うほか、自然災害や紛争が起きた地域で緊急的な人道支援も行う。2022年は約120カ国で4800万人以上の子どもを支援した。

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