テーマ : 西伊豆町

西伊豆の農家が宿泊施設 ワサビ育む自然味わって 収穫・出荷体験 湧水引き露店風呂も

 ワサビ栽培が盛んな伊豆半島・西伊豆町で、ワサビをテーマにした宿泊施設を営み、魅力を発信するワサビ農家の夫婦がいる。藤井わさび園の藤井幸光さん(55)=下田市出身=と千代美さん(55)だ。「ワサビを身近に感じてもらいたい」と、山あいのワサビ沢近くで収穫から出荷まで体験できる施設を開設。ワサビの消費拡大や栽培方法の普及に努め、静岡県内外から注目を集めている。

宿泊施設を営みワサビの魅力発信に努める藤井幸光さん、千代美さん夫妻。ワサビを育む湧水を引いた水道設備などを設けた=5月中旬、西伊豆町宇久須
宿泊施設を営みワサビの魅力発信に努める藤井幸光さん、千代美さん夫妻。ワサビを育む湧水を引いた水道設備などを設けた=5月中旬、西伊豆町宇久須

 県内外を勤務地に会社員をしていた幸光さんは、ワサビ生産の経験がある父親の影響で栽培に興味を持ち、2014年に千代美さんの故郷である西伊豆町に移住。20年以上放置されていたワサビ沢約千平方メートルを整備し、独学した無農薬栽培にこだわってネットを中心に販路を拡大した。当初は兼業だったが、農家に専念。沢の見学や収穫体験を行うなど生産者間で共有されていなかった栽培方法の継承にも励んだ。
 転機になったのは新型コロナウイルス禍。飲食店が休業を余儀なくされ、ワサビの供給が一時滞った。これに危機感を抱き、ワサビに触れる機会を提供して消費拡大や新規就農者の増加を目指そうと、21年、ゆっくりと収穫体験などができる宿泊施設整備に着手。約1500平方メートルの敷地を開拓し、22年10月、グランピング施設「わさびビレッジ」を開設した。
 トレーラーハウス4棟を設置し、近くの湧水を引いた水道設備や露天風呂を設けた。ワサビの収穫だけでなく、薪を割り風呂を沸かしたり、時期によってはシイタケやハッサクを収穫したり、目の前の川でホタル観賞をしたりできる。宿泊者に贈るワサビも好評で、味わい方の助言も行う。今後、川遊びや虫捕りができる場所を設けるという。
 幸光さんは「栽培は試行錯誤の連続で、結果が出るまでじっくりと手がかけられる楽しさがある。ワサビを育む自然や栽培方法を知ってもらい、ワサビ業界の盛り上がりにつながればうれしい」と話した。

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