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静岡県ホテル旅館生活衛生同業組合理事長/加藤賢二氏 「地域でもてなし」注力【変革力 新年トップインタビュー⑦】

 

加藤賢二氏
加藤賢二氏

 ―新型コロナウイルス感染症5類移行後の宿泊客の動向は。
 「静岡県全体は8~9割まで回復したが、業態や地域によって差がある。ビジネスホテルは堅調な一方、旅館は7~8割の回復にとどまる。伊豆半島をはじめ公共交通機関のアクセスが困難な地域も戻りが鈍い。ガソリン代の高騰が行き先変更につながっている可能性がある。大人数の団体が減り、小グループや個人、ファミリーが増えている。外国人客は中国人に代わって韓国や東南アジアからの来訪者の割合が大きい。中国人客が戻ればコロナ禍前の水準を回復するが、人手不足が深刻で受け入れ体制が整わない施設が多い」
 ―製品やサービスの価格見直しの動きが広がる。
 「数よりも質を追求し、海外に比べて安い宿泊料金の値上げを進める必要がある。原材料費や燃料費の高騰が続く中、コロナ禍のゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)の返済が始まった。コロナ下の支援策で何とか継続できた事業者の経営環境が厳しくなっている。人手不足解消のために従業員の賃金アップも欠かせない。ただ、客の選別も厳しくなっており、単純な値上げは理解されない。付加価値を高め、サービスに見合った形で価格転嫁を進めていきたい」
 ―付加価値を高める方策は。
 「地域でもてなすという発想を持ち、施設だけでなく食やレジャーなどの地域資源と組み合わせて価値を提供して満足感を高める。旬の食材を地域ならではの調理方法で提供する『ガストロノミーツーリズム』が一例。まずは、それぞれの施設が立地や周辺の資源から強みを見極めて行政などと共有、発信する。若者を中心に、SDGsの取り組みの有無を商品やサービス選択の判断材料にする人が増えている。フードロス削減や地産地消による輸送コスト削減を進める」
 ―宿泊業はデジタル化が遅れているとされる。
 「積極的に取り入れて業務の効率化を図り、従業員が働きやすい環境をつくることが大切だ。しかし、どこに行ってもサービスが同じと思われないよう業態に合わせて強弱をつける必要がある。例えば、ビジネスホテルはチェックインを含むデジタル化により利便性を追求できるが、旅館は従業員が客と対面し、おもてなしすることが大きな価値の一つ。組合加盟社でデジタルツールの活用事例や客の評価を共有し、業界全体の底上げを図る」
 (聞き手=東部総局・矢嶋宏行)

 かとう・けんじ 2021年から現職。堂ケ島ホテル天遊(西伊豆町)を運営する小松観光の会長。72歳。

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