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賀茂地区の学校統合再編 議論混迷の町も 進む少子化 道筋早急に【解説・主張しずおか】

 伊豆南部の賀茂地区で小中学校の統合再編が活発化している。一方でさまざまな事情で議論が棚上げされている町もあり、先行きが見通せない。統合とは別筋の中高一貫校設立を求める動きや県立高の再編議論が複雑に絡んでくる可能性もあり、関係機関には早急に道筋を示すよう求めたい。少子化が加速する中で迅速な対応が迫られている。

賀茂地区の学校統廃合の現状
賀茂地区の学校統廃合の現状

 「当初は不安だったが、大変大きな効果があったと受け止めている」。下田市教委学校教育課の糸賀浩課長(55)は統合効果を強調する。市内では昨春に市内4中学を1校に統合した。統合前のある中学では、教員1人が3学年全ての特定教科を受け持っていた事例もあったという。統合で一定の規模を確保したことによる「学びの質」の向上を利点の一つに挙げる。
 ただ、統合議論が当局の思惑通りに進んでいない自治体も。西伊豆町は小中の統合議論が校舎建設地周辺の地権者らの「強い反発」を受け1月に白紙化。約8年かけた議論が振り出しに戻った。町は「住民の意見を募り町の総意をつくる」としている。
 東伊豆町も選択を迫られている。小中4校を一貫校1校にすべきだとの答申を2022年末に受けたが、町は答申を尊重しつつさらに議論を深めるとの立場。今後は候補地の選定が焦点になる。ただ、町は元々一貫校2校を見込んでいたものの、予想以上の少子化で再検討した経緯もある。答申の「早急な統合が求められる」との文言は切実だ。
 統合の議論とは別に、賀茂地区への中高一貫校設立を訴えているのは下田高同窓会。他地域からの生徒受け入れを視野に入れている。ただ、県教委は県立高再編案を盛り込んだ第3次長期計画(18~28年度)の再検討へ賀茂地区に設置した地域協議会において「会議で(一貫校の)是非を議論するつもりはない」との立場を示した。
 とはいえ、地域の要望がある以上、一貫校の議論は不可欠だ。その場合、今より広域的な議論が必要になる。県教委の高校再編議論が各自治体の小中学校統合に影響を与えないとも言い切れず、早期の結論や具体的な行動が求められているのは各自治体だけではないだろう。
 丁寧な議論や地域との合意形成の重要性は言うまでもない。ただ、議論を進めている最中も少子化の波は一層大きくなっている。賀茂地区には移住促進に注力する自治体もあり、子育て世代へのアピールには教育環境の整備は不可欠だ。猶予はそれほど残されてはいない。

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