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地域おこし協力隊 候補者の裾野拡大、不安解消へ南伊豆で体験 

 新たな観光振興や特産品づくりなどに取り組む「地域おこし協力隊」。南伊豆町は首都圏をはじめとした県外からの人材確保を目指し、期間限定で活動を体験できるインターンの受け入れを始めた。着任後に隊員が地域で感じるイメージの不一致解消などが狙いで、国の制度を活用して町への関心も促す。協力隊制度を活用している他の各市町や県によると、本県で初の試みとみられる。

松原淑美さん(右)に教わりながら町内産品を撮影するインターン参加者=2022年12月中旬、南伊豆町の直売所「南伊豆湯の花」
松原淑美さん(右)に教わりながら町内産品を撮影するインターン参加者=2022年12月中旬、南伊豆町の直売所「南伊豆湯の花」


 昨年12月中旬、南伊豆町の地場産品直売所「南伊豆湯の花」。町が初めて受け入れたインターンの2人が、交流サイト(SNS)で情報発信するための写真を撮影していた。約2週間の期間中、広報役などを体験。町は今年2月下旬までに20人ほどを受け入れる見込みという。
 参加者の1人、中嶋祥汰さん(26)は都内でウェブライターのスクールを運営している。「今は協力隊に応募する考えはない」と話すが、南伊豆への移住を検討しているという。町はこうした参加者も、地域と継続的に関わる「関係人口」の増加に向け歓迎する。
 協力隊の経験者も取り組みを好意的に受け止める。2014年から3年間務めた松原淑美さん(45)は退任後、町内でゲストハウスを構えた。「地域の人とどう関わるかは大きな心配事。事前の交流があれば不安やミスマッチの解消につながる」と受け入れを歓迎する。
 町の協力隊員は22年12月現在3人。これまでに経験した8人のうち6人が民宿経営など結果的に南伊豆に移った。過疎化が進む中、町は労働人口の確保にもつなげたい考えだ。
 「現在の協力隊制度は売り手市場」。町企画課主幹の山口一実さん(52)はそう指摘する。「まずは隊員候補の裾野を広げることが重要。インターンを協力隊制度や町の魅力の普及につなげたい」と見据える。
 (下田支局・伊藤龍太、松崎支局・太田達也)

 <メモ>地域おこし協力隊のインターン制度は総務省が2021年度に始めた。09年度の協力隊制度の開始以来、地域になじめない任期途中の退任者が発生することなどから創設。体験期間は2週間から3カ月程度で、協力隊と同様の内容に取り組む。同省によると、利用自治体は非公開だが「数は多くなく、各自治体は手探り状態のようだ」(担当者)という。 働き手確保に成果 本県定住率 全国4位  本県全体の協力隊の定住率は76.8%で全国4位(2021年度総務省まとめ)と、多くが退任後も地域に根付いている。伊豆半島南部の賀茂地域では全6市町が地域おこし協力隊を採用する。22年12月までに計88人を受け入れた。
 西伊豆町はこれまでに退任した11人中7人が町へ定住、そのうち4人が起業した。まちづくり課企画調整係長の椿泰行さん(48)は「協力隊は定住促進や働き手の確保に一定の効果がある」と説明。人口減少や高齢化が加速する中で、人材確保の貴重な手段だと強調する。

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