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テーマ : 編集部セレクト

大自在(3月6日)あがた森魚さんと「オスカー」

 シンガー・ソングライターのあがた森魚さんが「遠州灘2023」と題したCDを出した。ジャケットには、白波を背に砂浜を歩く本人の姿がある。浜松市で撮った写真という。
 作品は同市を起点に各地を巡った23年の旅路が、演奏と歌、独白で表現される。75歳、51枚目のアルバムだ。近年、精力的な活動が際立つ。それは無二の節回しが健在の「歌手」「音楽家」だけにとどまらない。
 「俳優・あがた森魚」として出た映画が今週、注目を集める。ビム・ベンダース監督「PERFECT DAYS」。8日の第47回日本アカデミー賞は作品、監督など3部門で優秀賞、10日(現地時間)の第96回米アカデミー賞では国際長編映画賞候補に挙げられている。あがたさんは役所広司さん演じる男が訪れる居酒屋の常連客役。店主の石川さゆりさんの歌に、ギターを抱えて寄り添う場面もある。
 出演作が映画の本場米国で評価されているのは、どんな気分だろう。幾多の出会いが自分をここに連れてきた。そんな感慨をかみしめているのではないか。
 11年1月7日、あがたさんの静岡市での弾き語りライブ。当時の取材メモが出てきた。曲間の発言が細かく書かれている。「歌うという行為は人との出会いからしか生まれない。今、ここにいることにドキドキしているんです。ステージで歌うのはお客さんとの『デート』みたいなもの」。
 物事の全ては一期一会があざなう運命の上にある。遠州灘との縁を作品タイトルに掲げたあがたさん。出演映画に「オスカー」の栄誉が刻まれることを願う。

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