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社説(3月21日)新設のリニア会議 対策監視厳正に継続を

 国土交通省は、県内のリニア中央新幹線トンネル工事に伴ってJR東海が実施する水資源、環境保全対策の実施状況を確認するため、「静岡工区モニタリング会議」を新設し、初会合を開いた。
 国交省は大井川の水資源の確保と、南アルプスの環境保全に関する専門家会議を3年8カ月にわたって開催し、2023年12月までにそれぞれのテーマの報告書をまとめた。新設の会議は、JRが報告書を踏まえて実行に移す対策の適切性を継続的にチェックする役割だ。
 トンネル掘削工事に着手して以降に、想定していない事態が起きる可能性もあり、JRは影響が確認されるごとに適宜対策を講じる「順応的管理」の手法を採用する。JRが状況に応じて的確な対策を講じるかどうかを、国も関与する形で客観的に監視することは欠かせない。会議が中立な立場で役割を厳正に果たすよう求めたい。
 委員は県の専門部会委員を含む有識者7人。座長には、中日本高速道路会長を務めるなど経営手腕に定評があり、川勝平太知事とも親交がある一般社団法人ふじのくにづくり支援センター理事長の矢野弘典氏が就任した。国交省は選任理由を明らかにしないが、知事も納得する人物の起用で円滑に会議を機能させたいとの思惑がうかがえる。
 矢野座長は初会合で「JRと静岡県の間にかなりの隔たりがある」と述べ、県とJRに協議を促すとともに、両者の協議の進捗[しんちょく]についても確認していく考えを示した。本紙のインタビューに対しては、議論を加速させるためだとして、県とJR双方の代表者による新たな協議体を設置し、期限を区切って議論することもあり得ると提案した。
 提案通りに協議体を新設する必要性があるかどうかはともかく、事業を前に進めるには両者の認識の差を埋める作業が欠かせないとの矢野座長の指摘はもっともだ。県とJR双方が重く受け止め、課題の解決に向けて真摯[しんし]に議論を重ねてほしい。
 矢野座長は、モニタリング対象とする動植物の分布や地下水のありようについて、行政区分にとらわれずに弾力的に考える必要があるとの認識も示した。これに対し、JRの丹羽俊介社長は記者会見で、国交省と相談して柔軟に対応するとした。JRは矢野座長の求めにできる限り応じる必要があるだろう。
 一方、流域市町は田代ダムの取水停止期間中であれば県内での高速長尺先進ボーリングにより湧水が県外に流出してもJRに返水を求めないとしている。県は流域市町の意向を踏まえ、JRとの協議を加速させるなど柔軟な姿勢を示すべきだ。

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