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社説(3月19日)アフガン女性抑圧 教育禁止の即時撤廃を

 中学生以上の女子教育を禁じているアフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は、全34州のうち農村部の約10州で女子学生の公立医大への入学を容認する方針を示した。農村部で深刻化する女性医師不足に対応する例外的な措置とみられる。
 アフガンの女性は親族以外の男性と接触を避ける習慣があるため、女性医師の不足は女性の生命や健康に重大で深刻な影響を及ぼす。医療分野に限らず、女子の教育機会を奪うのは、社会に必要な人材の育成を放棄しているのに等しい。国の将来を危うくすることは明白だ。
 医大入学の容認は、タリバンの女性抑圧に対する国外の批判を意識したとの見方もある。国際社会は女子教育の禁止を即時に撤廃するよう改めて強く求めるべきだ。
 タリバンは2021年8月に再び権力を掌握すると、女性に対して日本の中学・高校に当たる中等教育と大学教育を禁止した。女子の教育が認められているのは小学生だけ。旧タリバン政権崩壊後、少女は学びの機会が増えただけに失望感も大きい。見つかれば制裁を受けるのを覚悟して「地下学校」に通う少女は後を絶たないという。
 タリバンは女性の就労も制限している。ただ、医療や保健、教育の分野は除外されている。静岡県を拠点にアフガンを支援する認定NPO法人カレーズの会が20年以上前からカンダハル州に開設している無料診療所の医師、助産師、栄養指導などの女性スタッフはタリバン復権後も変わらず業務に携わっている。
 だが、医大入学が認められるのは既に高校を卒業している女性だけで、高等教育を禁じたままでは将来的に女性医師が不足する。カレーズの会が運営を支援するカンダハル州の学校でも女性教諭が指導を続けるが、女性教員もやがて不足するのは間違いない。
 アフガンでは貧困や自然災害などで栄養不足に陥る人々が増えているが、暫定政権は国際社会から承認されていないため、海外から十分な支援が受けられない。旧タリバン政権崩壊後に国のかじ取りを担ったカルザイ元大統領は昨年11月の共同通信インタビューに、タリバンが望む国際社会復帰には女子教育再開など政策の転換が欠かせないことをタリバンの多数派は理解していると語っている。
 カレーズの会や、19年に凶弾に倒れた中村哲医師が代表を務めていたペシャワール会(福岡市)などの献身的な活動もあってアフガンは親日国といわれる。タリバン復権で閉鎖された日本大使館も22年9月から再開している。日本政府はタリバンに人道的見地から女性政策の改善を粘り強く促してほしい。

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