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社説(3月6日)性犯罪歴照会制度 子どもの被害根絶図れ

 政府は子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」の制度案を自民党の部会に示した。与党との調整を経て、今国会に法案を提出する方針だ。子どもの被害根絶につながる実効性の高い制度にしなければならない。
 制度案は、国がデータベースを構築し、学校や保育所などに求職者の性犯罪歴照会を義務付ける。学習塾や放課後児童クラブ、スポーツクラブなどは任意の参加による「認定制」とし、国の認定を受けた事業者には照会を求める。
 新たに就職を希望する人だけでなく、既に働いている人も対象で、性犯罪歴が確認されれば、子どもと接する業務からの配置転換や第三者の目が届かない状況が生じないようにするなど、雇用主は再犯防止措置を取る必要がある。対策が難しい場合は解雇も可能と想定し、適切な運用のためにガイドラインを整備する。子どもを性被害から守るには採用時のみのチェックでは不十分であり、現職への対応は不可欠だ。
 照会が可能な期間は、拘禁刑(懲役刑と禁錮刑を2025年に一本化)の場合は刑を終えてから20年、罰金刑以下は10年とした。性犯罪歴には痴漢や盗撮といった自治体の条例違反も含む。
 部会では「(性犯罪歴がある人を)子どもと関わる仕事に二度と就かせてはいけない」として、照会期間の延長を求める意見などが出た。憲法が定める「職業選択の自由」との整合性なども踏まえ、議論を深めるべきだ。
 犯歴の確認に加え、性犯罪の未然防止や早期発見のため、職員への研修や子どもとの面談などの安全確保措置も義務付ける。初犯を防ぐためにも重要な対応だ。子どもへの性犯罪は年齢によっては本人が被害と認識しにくいこともある。
 さらに政府は、性犯罪歴がなくても、子どもからの訴えなどで「性加害の恐れがある」と判断された人について、雇用主に配置転換などの安全措置を義務付けることを制度に盛り込む方針を固めている。
 こども家庭庁は4月から、幼児へのわいせつ行為などで資格を取り消された保育士のデータベースを導入し、保育所や認定こども園、児童養護施設に採用時の照会を義務付ける。児童生徒への性加害で免許を失った教員については文部科学省が昨年4月、データベースの運用を開始し、教育委員会や学校法人に採用時の照会を義務化した。
 教育や保育の現場で、性被害に遭う子どもは後を絶たない。幼い心に深刻な傷を残す卑劣な行為を防ぐための制度は、緒に就いたばかりと言える。見直しの議論と模索を怠ってはならない。

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