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社説(3月4日)ヤングケアラー 18歳以上も支援に力を

 大人に代わって日常的に家事や家族の世話を担うヤングケアラーの支援を初めて法制化する子ども・若者育成支援推進法の改正案が今国会に提出された。法的な定義がなかったヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と明記し、国や自治体が支援に努める対象と定める。
 ヤングケアラーはこれまで18歳未満と定義されることが多かったが、18歳以上の若者も支援対象に加える。成人になっても家族のケアが終わるわけではない。家族の世話で希望する進学や就職を諦めざるを得ないケースも少なくない。年齢で区切らないサポートは家族介護の経験者や支援団体が求めていた。
 18歳未満のヤングケアラー対策は、昨春発足のこども家庭庁の重点施策に据えられ、自治体でも支援条例の制定が進む。18歳以上の支援にも力を注ぎたい。継続して支援が受けられる施策や仕組みづくりも考える必要がある。
 国は2020年から22年にかけて小中高生だけでなく大学生の実態調査も行った。「世話をしている家族がいる」と回答した大学3年生は6・2%(約16人に1人)で、将来の不安として「希望する進路の変更を考えざるを得ない」と答えた学生が目立ち、必要な支援としては進路や就職などの相談を挙げた。
 こうした実態を踏まえて、こども家庭庁は4月以降、ヤングケアラーに関する自治体の相談窓口に進学や就職の専門支援員を配置する新事業を始める。運用に際しては、一般社団法人「ヤングケアラー協会」(東京)が開設している進学や就職、転職に特化したLINE(ライン)相談窓口を参考にしたい。
 相談には進学を諦めたり、就職で苦労したりした元ケアラーなどが対応する。寄せられる相談内容はさまざまで、目の前の生活に追われて頭の中が整理できていない人も多いという。相談スタッフは若い介護者と話し合いを重ねながら一緒に将来プランを設計する。こうした個々に寄り添う支援が望まれる。
 ヤングケアラー支援が社会全体で取り組むべき課題として位置づけられてからまだ数年に過ぎない。それでも実態調査を通じて学業や部活動、友人付き合い、進路などに影響を受けている子どもが一定の割合で存在することが分かり、調査に協力した教育現場では支援に対する理解と協力が広がっている。
 法改正を機に国や自治体は企業に対して家族の世話をしながら働いている若い従業員がいないか気を配るよう促してもらいたい。企業も介護離職に至らないような職場環境を目指してほしい。

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