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大自在(3月16日)さわやか

 国民生活の豊かさを示す「人間開発指数」の最新世界ランクで日本は24位となり前回の22位から後退した。国連開発計画が発表した。
 15日付本紙によると、報告書は「最貧層が取り残され不平等が拡大するとともに、世界規模で政治の二極化が進み、その結果行き詰まりが生じている」と分析する。特に日本の後退ぶりは深刻だ。1990年頃はランク上位の常連だった。
 当時急成長していた静岡県内企業の一つが炭焼きレストランの「さわやか」。12日に亡くなった創業者の富田重之さんが86年、本紙に理念を語っている。「無定見なものまねや無思想の店づくりでは、決して繁盛することはできない」。目指すは「手作り料理でだんらんの場を提供できる店」と。
 全国的に人気でも県外出店に慎重なのは理念の徹底のためだろう。全国チェーンの店で接客や食事に落胆することがあっても、「さわやか」はそれがないとよく聞く。奮発して外食先に選んで良かったと思えることが豊かさの一つかもしれないと気付かされる。
 富田玲社長もホームページでこう語る。「ハンバーグという『モノ』を売ってるだけなら、それで終わってしまいます。でも、ハンバーグを囲んで家族や友人と過ごした楽しい『思い出』や『語らい』はずーっと心に残ります。私たちが大切にしたいのは、その『コト=物語』です」。
 以前に本欄で「ゲームではなく、だんらんを提供している」と書いた任天堂にも通じよう。日本に本当の豊かさを取り戻すリーディング企業としても「さわやか」への期待は大きい。

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