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社説(3月17日)農産物輸出最高額 食料安保にも寄与する

 2022年の農林水産物・食品の輸出額が前年比14・3%増の1兆4148億円に上り、10年連続で過去最高を更新した。政府は25年に2兆円としている目標の前倒し達成を目指す。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ外食需要が海外でも回復し、貝類、青果物、ブリなどが好調だった。円安も追い風になった。
 品目別で米は73億8200万円(前年比24・4%増)、パックご飯は7億9千万円(同33%増)と高い伸び率だ。ロシアのウクライナ侵攻で食糧安全保障に関心が高まった。輸出向けの生産を維持しておけば、緊急事態が起きた時には国内供給に回すことができる。輸出需要をにらんだ農林水産物の生産拡大は食料安保に寄与する。
 生産調整(減反)による価格維持から、生産性向上と輸出による生産拡大へ、米政策の考え方を転換することが必要だ。
 米やパックご飯のほか、日本酒など前年比2けた増となった品目が多い中、静岡県の基幹作物の緑茶は7・2%増の218億8700万円と、過去最高額ながら目立たなかった。
 県は17年に「ふじのくにマーケティング戦略」を策定。茶、イチゴ、ワサビ、温室メロン、日本酒を海外戦略5品目として目標額を設定し、輸出拡大を目指している。
 国が輸出目標額の前倒し達成を目指す勢いを本県輸出戦略にも取り込みたい。中部横断自動車道の開通や清水港の利活用など、攻勢に転じるインフラは着々と整いつつある。
 輸出伸長は、人口減少などで国内市場が縮小する中、海外に売り込む力を着実に高めてきた成果と言える。「稼ぐ力」にさらに磨きをかけ、農林水産業の経営基盤を強化したい。
 これまでも政府は輸出手続き迅速化やブランド品種保護などに取り組んできたが、地方自治体やJAグループと連携して輸出促進策をさらに充実させ、日本の第1次産業が潜在力を発揮できる環境をつくることが重要だ。
 就労者の高齢化や耕作放棄地の拡大など農業を取り巻く環境は厳しさを増しているが、収入増によって魅力が増せば、新規参入につながる。若者の就農が進めば、ITを活用したスマート農業も拡大し、好循環が期待できる。
 輸出額が右肩上がりなのは喜ばしいことだが、輸入額はその約10倍にも上り、差し引き10兆円規模の赤字だ。食料を海外に大きく依存する構造的な問題を直視しなければならない。農家の経営基盤強化を着実に進めるためにも、輸出促進は持続可能な農業へ重要な戦略である。

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