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妊産婦や乳幼児の避難生活日用品、備蓄不十分 静岡県内市町 静岡新聞社アンケート【国際女性デー2024】

 地震などの災害時に女性や妊産婦、乳幼児が避難生活を送る上で必要になる日用品が、静岡県内の市町で十分に備蓄されていない実態が明らかになった。静岡新聞社が8日の「国際女性デー」に合わせて県内35市町に実施したアンケートで、1日時点で離乳食を備蓄しているのは4市町、赤ちゃん用おしり拭きは7市町にとどまった。調査した9品目中5品目で2割以下の市町にしか備蓄がなく、全市町に備蓄のない品目もあった。

 調査品目は、内閣府が男女共同参画の視点を盛り込んで自治体向けにまとめた「防災・復興ガイドライン」で例示した備蓄品から抜粋した。最も浸透していたのは生理用ナプキンで27市町に備蓄があった。一方、女性用下着を備えるのは5市町のみ。下着の汚れを防ぐおりものシートや、授乳期に必要な母乳パッドは全市町で備蓄がない。
 乳幼児用品では、粉ミルクまたは液体ミルクがあるのは20市町、哺乳瓶・人工乳首・授乳用コップは21市町、乳幼児用おむつは19市町で、ある程度備蓄されていた。他方で離乳食があるのは4市町、おしり拭きは7市町と限定的だった。  備蓄量は「十分ある」とした回答がある一方、約半数の市町が品目、量ともに「不十分」との認識を示した。多くの市町は、県の第4次地震被害想定に基づく避難所避難者数を基に備蓄量を判断。不足分は今後配備する市町や、災害時に民間の協定事業者から調達する計画の市町もあった。

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 これまで個人備蓄や国の支援、民間の協定事業者が保有する流通備蓄の活用を想定してきた市町で、近年の災害の激甚化や能登半島地震の被害状況を踏まえ、新たに備蓄を決めたり、必要性を再検討したりするとした回答が複数あった。
 備蓄を進める上での課題は、使用期限が短く更新作業が煩雑なことや、サイズや種類が多様で必要数の算定が難しいことなどが上がった。「実際にどのような需要があるのか詳細に理解していない」などとニーズ把握を課題とした市町もあった。
 (生活報道部・西條朋子)
防災担当 11市町「女性ゼロ」 ニーズ把握 課題  女性・妊産婦・乳幼児用品の備蓄が進まない背景には、市町の防災担当や防災会議などに女性が少なく、ニーズを十分くみ取れていない状況があると指摘される。アンケートによると、1日現在、約3割に当たる11市町で防災・危機管理部局に女性職員がいない。地域防災計画などを決める防災会議も4市町が女性委員不在で、女性委員が1人しかいない市町を合わせると約3割に上る。
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 防災会議に女性を増やすための課題としては「各関係団体の役職者を任命していて、役職者に女性が少ない」との声が多数上がった。委員33人中12人(36・4%)が女性と突出して多い掛川市では「各団体にできるだけ女性の選出をお願いし、副会長職の女性などが就任するようになった結果」と説明した。
命守る「とりで」 意見聴いて
 減災と男女共同参画研修推進センター(東京)共同代表を務める池田恵子静岡大教授(社会地理学)の話
 女性や乳幼児向けの備蓄はまだまだ不十分で、これらが被災した女性や乳幼児の命と健康を守るものだと改めて認識する必要がある。個人備蓄や流通備蓄は被災状況によって活用が困難な場合もあり、市町の備蓄は最後のとりで。ニーズとのずれを解消し、最低限の備蓄を整えるには、防災への女性の参画を進め、意見聴取を強化すべきだ。

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