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思い出の品 長期保管求める声強く 被災自治体、悩み共通【大型サイド】

 東日本大震災の津波で流され、持ち主の元に返る日を待つ家族写真やランドセルなど「思い出の品」。震災から12年がたち、保管を続ける自治体は減少傾向だ。西日本豪雨など全国の災害にも共通する課題だが、国は対応を自治体に丸投げで、関与は薄い。一方で持ち主への返却活動に精力的に取り組む民間団体もあり、現場からは「息の長い取り組みが必要」との声が上がる。

「思い出の品」の返却会に参加した佐々木陽子さん(右)ら=6日、岩手県陸前高田市
「思い出の品」の返却会に参加した佐々木陽子さん(右)ら=6日、岩手県陸前高田市
「思い出の品」の返却会で、佐々木陽子さん(左)と身内の写真を探す三陸アーカイブ減災センターの秋山真理代表理事(右)=6日、岩手県陸前高田市
「思い出の品」の返却会で、佐々木陽子さん(左)と身内の写真を探す三陸アーカイブ減災センターの秋山真理代表理事(右)=6日、岩手県陸前高田市
三陸アーカイブ減災センターで保管されている「思い出の品」。奥は代表理事の秋山真理さん=8日午後、岩手県陸前高田市
三陸アーカイブ減災センターで保管されている「思い出の品」。奥は代表理事の秋山真理さん=8日午後、岩手県陸前高田市
三陸アーカイブ減災センターで保管されている写真=8日午後、岩手県陸前高田市
三陸アーカイブ減災センターで保管されている写真=8日午後、岩手県陸前高田市
「思い出の品」の返却会に参加した佐々木陽子さん(右)ら=6日、岩手県陸前高田市
「思い出の品」の返却会で、佐々木陽子さん(左)と身内の写真を探す三陸アーカイブ減災センターの秋山真理代表理事(右)=6日、岩手県陸前高田市
三陸アーカイブ減災センターで保管されている「思い出の品」。奥は代表理事の秋山真理さん=8日午後、岩手県陸前高田市
三陸アーカイブ減災センターで保管されている写真=8日午後、岩手県陸前高田市

 宝物
 「昔に戻りたいね」「たくさん家があったんだな」。3月上旬、岩手県陸前高田市の災害公営住宅の一角で開かれた思い出の品の返却会。写真を眺めながら懐かしむ被災者らの姿があった。
 同市の佐々木陽子さん(86)は、自宅が津波で流され、家族写真を探しに来た。ルーペを使って1枚ずつ目を凝らす。「あっ、息子いたわ!」。修学旅行の集合写真に写るわが子を見つけると、「宝物ですね」と笑顔を見せた。
 主催したのは、震災直後から思い出の品の保管と返却活動に取り組む「三陸アーカイブ減災センター」(同市)。写真など20万枚と物品1500点余りを持ち主の元に届けた。現在も事務所で約7万4千枚と2400点を保管し続ける。代表理事の秋山真理さんは「希望する人全てに返却することが目標」と話す。
 義務なし
 一方、行政側の対応は「自治体任せ」なのが実態だ。
 環境省の災害廃棄物対策指針は、思い出の品について、自治体に対し「事前に取り扱いルールを定め、回収・保管し、持ち主に戻すことが望ましい」とするが、保管を義務付けてはいない。国からの財政支援は期待できず、保管費用や保管場所の確保は自治体の努力に委ねられている。
 こうした事情から、保管の打ち切りを検討する自治体が今後増える懸念もある。写真をデジタル化し、現物の保管を終了した自治体も多い。
 悩みは東北の被災地だけではない。2018年の西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市は、回収した思い出の品を昨年12月に廃棄した。約700点のうち約50点を持ち主に返すことができたが、カビが生えるなど劣化は深刻だった。担当者は「保管には専門性が必要。民間団体とどう連携するかも課題だ」と語った。
 1人でも多く
 被災地では津波の記憶が強く残り、思い出の品を見るのがつらいという人もいる。被災者が向き合えるようになるまで、一定の時間が必要だ。
 三陸アーカイブ減災センターが被災者ら約180人を対象に実施したアンケートによると、返却活動の継続を求める意見は9割超に達した。
 1人でも多くの持ち主への返却につながればと昨年末、思い出の品をインターネットで探すことができるオンライン閲覧を開始した。会員登録すれば品物を自由に閲覧できる。
 センターによると、沿岸自治体には少なくとも写真など100万点以上がまだ保管されている。秋山さんは「市町村だけで保管し続けるのが難しければ、国や県、民間団体とも連携し、しっかり保管できるような仕組みが必要だ」と話した。

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