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北朝鮮が農業で重要会議 国家統制強化が引き金か 食料不足、厳格管理も

 北朝鮮の朝鮮労働党が重要会議の党中央委員会拡大総会を招集した。農業で「前代未聞の厳しい難関」(党機関紙、労働新聞)に直面していると表明しており、食料不足の対応に追われているもようだ。穀物の不作に加え、経済の国家統制を強める政策変更が引き金となって問題が起きた可能性がある。金正恩党総書記の体制は穀物管理の一層の厳格化で収拾を図るとみられる。

中国遼寧省丹東市内に積み上げられた、北朝鮮に輸出されるコメ=2022年12月(共同)
中国遼寧省丹東市内に積み上げられた、北朝鮮に輸出されるコメ=2022年12月(共同)
北朝鮮平安北道で一部冠水した畑=2022年8月、中国・丹東から撮影(共同)
北朝鮮平安北道で一部冠水した畑=2022年8月、中国・丹東から撮影(共同)
北朝鮮の食料作物の生産量(推定)
北朝鮮の食料作物の生産量(推定)
中国遼寧省丹東市内に積み上げられた、北朝鮮に輸出されるコメ=2022年12月(共同)
北朝鮮平安北道で一部冠水した畑=2022年8月、中国・丹東から撮影(共同)
北朝鮮の食料作物の生産量(推定)

 市場原理排除
 韓国農村振興庁の推定では、北朝鮮の2022年の作物生産量は21年より18万トン減の451万トン。田植え期の干ばつや夏の長雨、新型コロナウイルス対策の行動制限などが理由で振るわなかったが、20年はさらに悪く「22年が特に凶作だとは言えない」(韓国政府関係者)。
 一方、北朝鮮消息筋によると、同国は昨年10月以降、チャンマダンと呼ばれる自由市場での穀物の売買を禁じ、住民は当局が管理する「糧穀販売所」でのみ決められた量を購入できる制度を始めた。モノの生産や流通から市場原理を排除し、国家が一元的に管理する最近の経済運営方針を農産物にも適用した形だ。
 供給停滞
 韓国の北韓大学院大の梁茂進教授が得た情報によれば、糧穀販売所の価格はチャンマダンの市場価格より安く設定された。安定供給を図る目的もあったようだが、生産者が安く買い上げられることを嫌って生産量を偽り、作物を闇取引に回すなどしたため販売所が必要量を確保できず、住民への供給が滞っているとみられる。
 党は昨年9月に「食用穀物に関する政策の執行を妨害する現象」と闘うと強調し、その後に流通管理を強化する法改正を実施。収穫物の隠蔽を見越して取り締まり強化を警告したとみられるが、混乱は防げなかった。昨年中国から輸入したコメと小麦粉計約13万トンのうち半分は10月以降に集中。収穫期直後にもかかわらず、外部調達の拡大に迫られたもようだ。
 政治的思惑
 韓国は北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した2月18日、大統領府が声明で「餓死者が続出している状況で核・ミサイル開発にしがみついている」と非難した。だがその3日前には権寧世統一相が国会で「餓死者が続出しているようには見えない」と答弁しており、政治的思惑で評価を一変させる態度が信頼性を損ねている。
 北朝鮮は新型コロナ対策名目の厳格な出入国統制を今も続けており、外部世界から見えないまま住民生活の危機が深まっている恐れがある。(北京共同=粟倉義勝)

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