「植物由来プラ」挑戦拡大 ホタテ貝殻や古米を利用 環境配慮、課題は認知度
世界的にプラスチックごみ削減の動きが進む中、廃棄処分に困るホタテの貝殻や食用に適さない古米などを使い、植物由来のバイオマスプラスチックを作る取り組みが広がっている。環境への負荷が低く温室効果ガス排出を抑える効果も。政府は導入を促進するが目標には届いておらず、専門家は「認知度の低さが泣きどころ」と指摘する。
「貝殻の活用を試行錯誤してきたが、やっと実った」。1月下旬、日本有数のホタテ水揚げ量を誇る北海道猿払村。貝殻が原料に含まれるバイオマスプラスチックでできたヘルメット「ホタメット」を手に、伊藤浩一村長が「同じ課題を抱える自治体の先駆けになれば」と顔をほころばせた。
猿払村でホタテを加工する際に出る貝殻は年1万~1万2千トン。農地などの地下水路に敷き、水はけを良くするために使うが需要は安定しない。
その状況を知った大阪市のプラスチックメーカー「甲子化学工業」が「外敵から身を守る貝殻」で「漁師の安全を守るヘルメットを作れないか」と考えた。提供を受けた貝殻を粉砕し廃棄プラスチックと混ぜ合わせた素材を開発、製品化に成功した。猿払村漁協の木村将彦参事は「貝殻の置き場は限られ処分に費用もかかる。有効活用してもらえるとありがたい」。
一方、バイオマス資源を利用したプラスチック樹脂原料の製造・販売を手がける「バイオマスレジンホールディングス」(東京都)は、米やコーヒー、そばを原料にしたバイオマスプラスチックを製造する技術を開発。
そのグループ会社が運営する福島県浪江町の工場では、町の農家から仕入れた「資源米」や、販売会社が精米する際に発生する「くず米」など、食用に適さず飼料にもならない米を混ぜたバイオマスプラスチック「ライスレジン」を製造。おもちゃやスプーンなどに加工されている。
同町の担当者は「米の消費が減り、主食用米が余っているのが現状。同社との連携が拡大することで、農家の新たな経営の柱となっていってほしい」と期待を寄せる。
プラスチックごみの国内総排出量は2019年に約850万トン。海洋生物が餌と間違えて食べるなど生態系の乱れにつながっているとの指摘も。政府は19年策定のプラスチック資源循環戦略で30年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入する方針を掲げたが、20年度の導入量は約10万5千トンにとどまる。
北海道大の木村俊範名誉教授(バイオマス利用工学)は「石油由来からバイオマス由来の素材に置き換えるほど温室効果ガスを削減できる」と説明。その取り組みを広げるには「学校教育に取り入れるなどして子どもの頃から知ってもらうことが必要」と指摘した。