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3日連続で撃墜 上空の目、ひそかに浸透か 相次ぐ飛行体、米に疑心【表層深層】

 米軍が中国の偵察気球を撃墜後、所属不明の飛行物体を10日から3日連続で撃ち落とした。米軍が空域の警戒水準を引き上げたことで、従来探知されなかった物体の発見が相次いだもようだ。米国が覚知できぬまま、外部勢力による空からの偵察活動がひそかに広がっていたのではないか―。中国に加えロシアの関与があり得るとの見方も浮上、「上空からの目」を巡る疑心暗鬼が膨らむ。

米軍が撃墜した飛行物体
米軍が撃墜した飛行物体

 形状不一致
 「気球と分類するつもりはない」「推進システムを備えているかもしれない」。米中西部ミシガン州のヒューロン湖上空で、米軍のF16戦闘機が飛行物体を撃墜した12日。米軍高官は記者団に対し、歯切れの悪い物言いに終始した。
 米アラスカ州、カナダ・ユーコン準州、ミシガン州。飛行物体の撃墜場所はばらばらで、高度は偵察気球の約1万8千メートルよりも低い約6千~1万2千メートル。いずれも気球よりはるかに小型という。
 米紙ニューヨーク・タイムズは10日の物体は撃墜後に粉々になったとした上で、11日は円筒形、12日は八角形だったと伝えた。形状の不一致も謎を深めている。
 米軍は4日の撃墜を受けレーダーの精度を引き上げ「同程度の高度の領空を一層注視するようになった」(国防総省高官)。警戒を強めて不審な物体を連続で見つけ出したが、そうしなければ見過ごされた可能性があることを浮き彫りにした。
 米政府高官は仮説と断った上で、三つの飛行物体は中国か、ウクライナ侵攻で米国と対立するロシアが送り込んだ可能性があると指摘。米当局が飛行物体を覚知するまでどれほどの時間を要し、どう対処するかを見極めようとした可能性があるとの見方を示した。  台湾にも
 これらの物体を中国が差し向けた証拠はない。だが、中国が高高度の空域に注目して早くから軍事用の気球や飛行船を開発してきたのは事実だ。
 「(近宇宙は)各国の軍がまだ重視していないが、戦略的意義が突出し、高い軍事的価値がある」。2013年の中国軍内部資料はこう強調していた。人工衛星が移動する宇宙と航空機が飛行する大気圏の境界に位置する近宇宙はレーダーから捕捉されにくい一方、地上に近い分、精度の高い画像が取得できる。さらに気球は、航空機や衛星に比べ低コストだ。
 同資料は将来、台湾海峡や中印国境などの上空に配備する方針を明確にしているが、後に台湾海峡に実戦配備されたとされる。英紙フィナンシャル・タイムズが台湾高官の話として伝えたところでは、中国軍の気球は台湾上空に頻繁に飛来し、数週間前にも現れた。  「中国脅威論」
 「米国の稚拙な政治ショー」。13日付の中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は連日にわたる米軍の撃墜を社説で非難した。「戦争中でもないのに繰り返し戦闘機を使い、中国脅威論の論者を満足させている」と皮肉たっぷりに論評した。
 中国では米国への反感が高まる。中国軍事シンクタンク幹部は「米国こそハイテクをスパイ活動に悪用している張本人だ」と批判し、米中対話の機運はしぼみつつある。
 中国筋は「中国軍の気球はこれまでも米国本土付近まで飛行している。米政府が騒ぎ立てるのは、反中意識をあおる別の政治目的がある」と分析した。(ワシントン、北京、東京共同)

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