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高速道路の改修 無料開放、事実上の破綻 民営化時、更新想定せず

 高速道路各社の老朽化対策が31日、出そろった。新たに必要な費用は5社で1兆5千億円。道路公団民営化時には大規模な更新を想定しておらず、政府は有料期間を2115年まで50年延ばして対応。無料開放の計画は事実上破綻した。政府はなお無料化の旗を降ろしていないが、期限後の日常的な維持管理費も税金ではなく、利用者負担を求める案がくすぶる。

記者会見する高速道路3社の担当者ら=31日午後、東京都千代田区の東日本高速道路本社
記者会見する高速道路3社の担当者ら=31日午後、東京都千代田区の東日本高速道路本社
東名高速道路横浜町田インターチェンジ付近=2022年12月
東名高速道路横浜町田インターチェンジ付近=2022年12月
記者会見する高速道路3社の担当者ら=31日午後、東京都千代田区の東日本高速道路本社
東名高速道路横浜町田インターチェンジ付近=2022年12月

 原則論
 1980年代開通の関越道・土樽地区(新潟県)。東日本高速は2011年に舗装を全面補修した後、1年ごとに手当てしてきたが、10カ月でひび割れが生じたこともあった。新たな改修計画では地中深くの層まで補強し、耐久性を高めるという。
 東日本、中日本、西日本の3社が管理するのは上下線合わせて約2万キロ。1日当たり730万台が利用する上、大型車の通行量が一般道の10倍以上あり、道路への負荷が大きい。開通から40年以上の区間は22年3月時点で3割。10年後には6割に増える。
 05年の道路公団民営化は「無駄な道路は造らない」という小泉純一郎首相(当時)の意向に沿って新規建設の歯止めに主眼が置かれた。40兆円に膨れ上がった債務を料金収入で50年までに完済した後、無料開放するとの原則論は維持した。
 国土交通省出身で東日本の由木文彦社長は「当時、老朽化対策コストは俎上になかった」と回想する。
 先祖返り
 老朽化がクローズアップされたのは12年に起きた笹子トンネル(山梨県)の天井板崩落事故がきっかけだ。対策費確保のため、政府は有料期間を65年まで延長した。
 今回再延長するのは、笹子事故後に義務化した5年に1度の定期点検などで「想定以上の劣化や損傷」(高速各社)が見つかったのが要因だ。
 財源確保に向け政府内では一時、永久有料の道を模索する動きもあった。料金を徴収する期限を撤廃し、一定期間ごとに計画を作り替えて改修を進める方式で、改修が続く限り、無料化は実現しない。
 公団時代、新規建設のたびに有料期間を延ばした論法と同じで、先祖返りとも言える。だが調整の過程で「債務完済後の無料化を掲げた民営化の理念を逸脱する」との意見が出て、期限撤廃は白紙となった。
 ただ2115年で有料期間を終えても維持管理は必要だ。国交省幹部は「無料化とは税金で賄うことだ。高速道路を使わない人の理解を得られるだろうか」と漏らす。
 誠実
 将来の費用負担を巡り、国交省の有識者部会が21年に出した中間答申は「料金徴収期限はたびたび先送りされ、無料化の説明に不信感が高まっている」としつつ、永久有料化と、税負担への切り替えの両論を併記、結論は先送りにした。
 人口減少で交通量が大きく減れば十分な料金収入を確保できなくなる一方、維持管理のコストを減らせる技術革新も想定され、現段階では判断が難しいためだ。
 野党議員は「原則有料にするなど、現実に即して方針転換すべきだ」と訴える。これに対し政府関係者は「2115年と言うと冗談のように受け止められるが、現時点で見通せる老朽化対策の期限として設定した。国民に誠実なやり方だ」と主張した。

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