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漁師の「サンマ離れ」加速 稼ぎ望めず、戦争も影響

 各地で漁師の「サンマ離れ」が加速している。近年は深刻な不漁が続き、今年も水揚げは最盛期の5%以下と低調。一方、海洋環境の変化で漁場は遠のき、高止まりする燃料代が重くのしかかる。ロシアのウクライナ侵攻で操業に制約もかかり「リスクが高いのに、稼ぎが望めない」と別の漁に切り替える動きが広がる。

店頭で過去最高額となる1匹1万円の値札が付いた初物サンマ=7月、北海道釧路町
店頭で過去最高額となる1匹1万円の値札が付いた初物サンマ=7月、北海道釧路町
北海道根室市の花咲港で水揚げされるサンマ=11月
北海道根室市の花咲港で水揚げされるサンマ=11月
北海道根室市の花咲港で水揚げされるサンマ=11月
北海道根室市の花咲港で水揚げされるサンマ=11月
サンマ漁場変化のイメージ
サンマ漁場変化のイメージ
店頭で過去最高額となる1匹1万円の値札が付いた初物サンマ=7月、北海道釧路町
北海道根室市の花咲港で水揚げされるサンマ=11月
北海道根室市の花咲港で水揚げされるサンマ=11月
サンマ漁場変化のイメージ

 「秋本番になっても日本近海に回遊する群れが薄かった。たびたび千キロ離れた公海での漁を強いられた」。漁期終わり間近の12月上旬、サンマ水揚げ量日本一の北海道根室市の花咲港。地元漁船「第81北星丸」の男性乗組員(52)が厳しい実情を明かした。
 全国さんま棒受網漁業協同組合(東京)によると、11月までの漁獲量は過去最低の昨年同期とほぼ横ばいの約1万7869トン。1980年以降は長らく10万~20万トン前後で推移してきたが、近年は減少の一途をたどる。
 流通量が限られることで価値は高まり、全さんま組合によると、11月の10キロ当たりの単価は10年前の3・7倍に上昇。北海道の鮮魚店では、初物が1匹1万円で売り出されることもあった。
 不漁の主因は資源量の減少だ。水産研究・教育機構(横浜市)の調べでは、今年の北太平洋におけるサンマの推定資源は調査を始めた2003年と比べ6割少ない約200万トン。外国船の漁獲増に加え、海水温の変化などで日本近海を通過するはずの回遊ルートが餌場の少ない東の海域にずれ、個体が死ぬ可能性が上がったとみられる。
 日本漁船は、遠のいた漁場との往復に従来の2倍近い時間を要すことになり、総水揚げ回数は減少傾向。全さんま組合の大石浩平専務理事は「積める燃料が限られ、しけに弱い小型船の操業に影響が出ている」と話す。
 さらに、全さんま組合によると、今年はロシアが主張する排他的経済水域(EEZ)での操業許可を取る手続きが、ウクライナ侵攻に伴う各国の対ロ制裁で難航。同水域の漁は見送られ、漁獲の伸び悩みにつながった。
 状況の好転が見込めない中、北海道では厚岸漁協の数隻がサンマの漁期の8~9月、日帰り可能なイワシ漁に切り替えた。同漁協の職員は「赤字を避ける苦渋の判断。ただイワシは安く、代替になるかと言えば難しい」とこぼす。岩手県の大船渡港や宮城県の気仙沼港を拠点とする小型船でも同様の動きが出ている。
 サンマの漁獲回復には今後、資源の管理が鍵となる。昨年から日本を含む8カ国・地域はそれぞれの漁獲枠を削減する取り組みを始めた。根室市の船頭、長野重巳さん(69)は「大漁が望ましいが、漁の持続性も重要。最適のバランスを見つけ、今後もサンマを食卓に届けたい」と語った。

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