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舞台「遥かな町へ」 漫画の魅力、国境超え上演 故谷口ジロー作

 「孤独のグルメ」の作画などで知られ、海外でも高い人気を誇る漫画家の故谷口ジロー。彼の代表作の一つ、「遥かな町へ」は、スイス人の夫妻の演出・脚色で、フランス語圏で2009年から上演され、人気を博してきた。その舞台がこのほど、日本で初めて上演。国境を超えて世界中の人を魅了する力が存分に込められていた。

(撮影・佐野洋之)
(撮影・佐野洋之)

 会社員の中原博史は出張の帰り道、間違えて鳥取県の故郷に来てしまう。久々に母の墓参りをした際、めまいを起こし、気付くと48歳の記憶を持ったまま、中学2年生の14歳の自分にタイムスリップ。その年の夏に父与志雄が失踪したことを思い出し、博史はなんとかして止めようとするが…という物語だ。
 今回の公演は文化庁と日本劇団協議会が主催。若手俳優を育成するプロジェクトの一環で、スイスからドリアン・ロセルとデルフィヌ・ランザ夫妻を招き、日本人キャストが出演した。
 舞台上の1枚の大きな白い布が地上に舞い上がり、キャストが登場。横一列で舞台を雑巾がけして、自己紹介することから始まる。舞台の装飾が少ないのは、観客の想像力をかき立てる効果があるのだろう。
 原作は1998年に「ビッグコミック」誌で連載。フランス語訳もされ、03年には漫画界のカンヌともいわれるアングレーム国際漫画祭で最優秀脚本賞を受賞した。
 ロセルは「(谷口の)作品の筆致にはとても深く繊細な洞察力がある」とコメント。その上で「漫画は1人で読むものだけれど、作品を舞台にすることでたくさんの人と感情を共有できる」とも。日本の漫画文化へのリスペクトと、演劇への熱い思いを体感できる舞台だった。
 公演のアーカイブ配信は、日本劇団協議会の公式サイト内のリンクから2022年12月23日まで販売、同27日まで閲覧できる。(工藤恵・共同通信記者)

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