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同時通訳者の田中慶子さん 好奇心が切り開いた道をゆく【多士才々】

 「人生に山登り型と川下り型があるなら、完全に後者です」。そう自己分析する同時通訳者の田中慶子さんは、ダライ・ラマ、ビル・ゲイツなど多くの著名人の通訳を務めてきた。華麗な経歴と思われがちだが、高校は不登校になり失業も経験。“座礁”を重ねながら道を切り開いたのは、好奇心だった。

世界のトップリーダーの通訳には「緊張するし失敗する時もある」という。「でも、『すごく楽しそうに訳してくれたからまた来てね』と言われます」と語る田中慶子さん
世界のトップリーダーの通訳には「緊張するし失敗する時もある」という。「でも、『すごく楽しそうに訳してくれたからまた来てね』と言われます」と語る田中慶子さん

 「みんなと同じが苦手でした」。画一的な「正しさ」を求める日本の教育から逃げ、米国各地を旅するNPO活動に参加。22歳で現地の高校に入り、猛勉強して大学を卒業するも、帰国後は「出るくいは打たれる」企業文化に挫折。転職したNPOも破綻した。
 失業手当を受けながら通訳学校へ。就職中に抱いた「英語で得た知識を日本語に変換できないモヤモヤ」を解消したかったし、ドイツで出会った通訳の老人の言葉が脳裏にあった。「通訳になりなさい、あなたのような人が業界に必要だ、と」
 同時通訳は発言の意図を瞬時に理解するための事前準備が欠かせない。「その時に興味を持てるかどうかで苦行にも楽しみにもなる。今思うと、冷戦後の激動のヨーロッパで働く彼に興奮して質問攻めしたのが見込まれたかな」。在校中にCNNの通訳に合格。以来20年以上フリーで活躍する。
 多くの顧客に「悩み相談」された経験から「コーチング」と呼ばれる指導法も習得。新刊「新しい英語力の教室」(インプレス)では、「やりたいことを明確化し必要な策を絞る」というコーチングの手法を生かした英語学習法を提唱した。
 英語に限らず、「やりたいこと」を見つけるのは案外難しい。「そんな時は違和感を大切に。これはNOという選択を重ねるとYESが見えてくるのでは」。自身の川下りも、まだまだ途上だ。

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