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介護負担、結論先送り 生活不安、懸念相次ぐ 企業側と対立、今後も難航【大型サイド】

 3年に1度の介護保険制度改正を巡り、「給付と負担」見直しの結論が来年夏に先送りになった。年末までに厚生労働省の部会が取りまとめることが通例で、延期は異例だ。利用者の負担増の提案に、当事者らから「生活が破綻する」と懸念の声が相次いだことが背景にある。一方、介護財政を支える企業側は制度維持に向けて現役世代の負担を抑えるよう求める。意見は激しく対立し、今後の取りまとめも難航しそうだ。

介護の自己負担のイメージ
介護の自己負担のイメージ

 「認知症の母にちゃんとしたケアができなくなるかもと思うとつらい」。「認知症の人と家族の会」(京都市)が9月からオンラインや郵送で集めた、サービスの自己負担増に反対する署名は10万筆を超えた。母親が「要介護2」と認定され、デイサービスに通っているという人は「利用できなくなったらどうしたらいいのか。介護休暇制度を使える企業はまれだ」とコメントを寄せた。
 認知症の人と家族の会の花俣ふみ代常任理事は「高齢者は年金暮らしの人が多い上、物価高が生活を直撃している。負担が増えたら生きていけない、という切実な声が出ている」と訴える。
 現役世代の保険料の一部を負担する企業側は、高齢者にも「能力に応じた負担」を求めている。
 11月下旬、厚労省の社会保障審議会の部会。1割負担の人のうち一部を2割に引き上げる案について、経団連の担当者は「現役世代はどんどん減っていく。一定所得以上の高齢者の負担を検討すべきだ」と支持。大企業の会社員らが入る健康保険組合連合会の担当者も「現役世代の負担は限界に来ており、制度が危うい」と口をそろえた。
 「最も改革が必要な介護分野において制度改正の議論を出さないことは、この会議が果たすべき使命から逃げていると言われかねない」。負担増への賛否が噴出し、政府の全世代型社会保障構築会議でも方針を打ち出せない状況に、メンバーの土居丈朗慶応大教授は12月初旬の会合で意見書を出し、早急な決着を促した。
 だが政府は結論を先送りした。政府関係者は、世論を意識する官邸や与党の意向があると背景を解説する。「介護費はものすごく伸びる。何とかしないといけないが、与党や官邸が慎重だ」

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