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新型コロナ法的位置付け インフルと比較に疑問の声 致死率、近く最新データ

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け見直しで鍵を握る、インフルエンザと重症化率や致死率を比較した最新データが厚生労働省の専門家組織会合で近く示される可能性が出てきた。医療の専門家からは「異なる感染症を単純に比較できない」との疑問の声が多く、死者の多さや医療への負荷などを検討する必要性が指摘されている。

新型コロナウイルス感染症対策分科会の会合後、記者会見する尾身茂会長(右)=9日、東京都千代田区
新型コロナウイルス感染症対策分科会の会合後、記者会見する尾身茂会長(右)=9日、東京都千代田区


特措法
 インフルエンザとの比較が重視されるのは、緊急事態宣言など政府が取れる措置を定めた新型コロナ対応の特別措置法の適用に関わるため。11月25日付の政府の基本的対処方針ではインフルエンザの致死率は50代以下で0・01%、60代以上で0・55%とされる一方、新型コロナは今年3~4月のデータで50代以下0・01%、60代以上1・13%。60代以上で致死率が相当程度高いとして特措法適用の根拠となっている。
 政府新型コロナ対策分科会の経済系メンバーは今夏の流行第7波のデータが反映されていないとして早急な更新を求めている。実際に第7波の大阪のデータでは60代以上の致死率は0・75%で、インフルエンザに近づいているとの見方がある。

難しさ
 一方、奈良県立医大の野田龍也准教授(公衆衛生学)は、ある期間の感染者数と死者数から算出した致死率は「単純に比較できない」と指摘する。
 人々が慣れているインフルエンザは感染しても受診しない人が新型コロナより多いとみられ、重症化率や致死率の計算で分母となる「感染者数」に計上される人が実態より少ない恐れがあるとする。感染者のデータの集め方が異なる点にも注意が必要という。
 野田さんらは感染者数を使わず、人口1千万人当たりの年間死者数に換算してインフルエンザと今年3~7月の新型コロナのデータを比較。0~19歳では新型コロナの方が少なく、20~39歳はほとんど差がなかったが、40~69歳では45~284人、70歳以上では935~3395人、それぞれ新型コロナの方が多く、死亡リスクが比較的高いとの結果が出た。
 新型コロナは病院外で亡くなった人も把握されやすい傾向にあり、数値が高めに出ている可能性はある。野田さんは「若者では大きな差がないと言えるだろうが、高齢者では実際どのくらい差があるのか分からない」と比較の難しさを語る。

違う病気
 政府関係者によると、9日に開かれた分科会では医療系メンバーから新型コロナとインフルエンザは全く違う病気で、がんと比べるのと同様に意味がないといった意見が出た。終了後に記者会見した尾身茂会長は、流行の季節性の有無や医療への負荷も考慮する必要があるとの指摘があったと紹介。「この病気は常に変化している。これからどういう措置をするのかしないのか、結論を出すには、この病気の特徴を理解しないといけない」と述べた。
 ある医療系のメンバーは「新型コロナは後遺症の問題や、感染を繰り返すと症状が重くなるという研究があるため、あなどれない。簡単に考えて良いと思っている医療の専門家は誰もいないだろう」と話している。

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