介護事業者の倒産最多 「難民」急増の恐れ 代替サービス確保困難
2022年の介護事業者の倒産件数が過去最多となった。事業者は新型コロナウイルス禍、物価高、ヘルパー不足の“三重苦”にあえぎ、在宅の高齢者を中心に、代わりのサービスを受けられない「介護難民」が急増する恐れが出ている。
山梨県の介護事業者は、12月末にデイサービスを休止する。コロナ前は約60人が利用していたが、コロナ禍で約30人に半減したことが響いた。職員が濃厚接触者となったため出勤できず、1日の利用者数を制限したことも数回あった。国の補助金では、減収分を下支えする効果は乏しい。
高齢者が自宅から通うデイサービスでは感染対策にも苦労する。同居家族からの感染リスクが避けられず、認知症の人にマスク着用を強いることも難しいからだ。
担当者は「次の年こそは収束するだろうと思って耐えてきたが、まだ影響が続くと考えると休止せざるを得ない。楽しみにしている人のためにもやっていきたかった」と悔しさをにじませる。
「コロナ禍に物価高が重なり、来年はさらに倒産が増えそうだ」。約2500事業者が加盟する全国介護事業者連盟(東京)の斉藤正行理事長は危機感をあらわにする。マスクや消毒液の費用もかさみ、収益に重くのしかかる。
特別養護老人ホーム(特養)などでは、入院先が見つからずに施設で亡くなる高齢者のみとりが発生。職員が感染すれば同僚が残業や休日出勤でカバーし、斉藤さんは「経営面以外でも現場は疲弊している」と訴える。
事業者が倒産すると、通常は担当のケアマネジャーらが代替サービスを手配してくれる。しかし埼玉県新座市で訪問介護などを運営する認定NPO法人「暮らしネット・えん」代表理事の小島美里さんは、新たな受け皿を探すのは容易ではないと語る。背景にあるのは介護の人材不足だ。
厚生労働省によると高齢化の進行に伴い、19年度に約211万人だった介護職員は、40年度に約280万人が必要だと推計される。一方、他業種と比べ賃金が低いため人材が集まりにくく、高齢者の自宅暮らしを支えるヘルパーがコロナ禍を機に離職するケースが出ている。
小島さんは「受け皿が見つからず、生活が崩れると、認知症が進んだり、体の状態が悪化したりするなど、重度化してしまう」と危惧する。