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サッカーW杯日本代表 8強ならずも熱狂呼ぶ 次回大会へ課題も山積【表層深層】

 サッカー日本代表のワールドカップ(W杯)カタール大会は、決勝トーナメント1回戦のPK戦でクロアチアに屈して幕を閉じた。悲願の8強には届かなかったが、1次リーグでは優勝経験国のドイツ、スペインを撃破。新型コロナウイルス禍で長く遠ざかっていたスポーツの熱狂を呼び覚まし、根強いサッカー人気を証明した。今後は世代交代が求められ、2026年の次回大会に向けては課題も多い。

サッカー日本代表のW杯戦績と日本協会が掲げる主な目標
サッカー日本代表のW杯戦績と日本協会が掲げる主な目標

一体感
 ドイツを逆転で破った初戦。終了の笛と同時にベンチからピッチへと選手が飛び出し、一体となって歓喜を分かち合った。その頃、渋谷のスクランブル交差点にはハイタッチをして喜ぶ若者の集団がいた。深夜にもかかわらず、テレビの視聴率は平均世帯視聴率(関東地区)で35・3%をマーク。インターネット放送局「ABEMA」による新たなスタイルの中継も視聴者を引きつけ、列島が熱狂した。
 スペインからも金星を挙げた直後、吉田麻也主将(シャルケ)はロッカーのスクリーンに渋谷スクランブル交差点の定点カメラ映像を投影するようスタッフに頼んだ。「コロナがあって(失われたサポーター、ファンとの)一体感がすごく恋しかった。それを少しでも感じたかった」。昨夏の東京五輪では無観客の会場とメダルを逃したむなしさに打ちひしがれた。スポーツ、サッカーへの熱気を取り戻したいとの願いも快進撃を支えた。
世代交代
 長友佑都(FC東京)が「歴代最強」と評したチームも今後は世代交代が進む。34歳の吉田や4大会連続でメンバー入りした36歳の長友、最年長39歳の川島永嗣(ストラスブール)ら功労者が去ることになりそうだ。クロアチア戦後の取材エリアでは誰もが今後の明言は避けたが、32歳の酒井宏樹(浦和)からは「4年後は現実的には難しい」との本音が漏れ出た。
 バトンを受け継ぐのは東京五輪世代だ。21歳の久保建英(レアル・ソシエダード)は体調不良、24歳の冨安健洋(アーセナル)は故障がちでやや低調だったが、24歳の堂安律(フライブルク)は2得点。25歳の三笘薫(ブライトン)は攻撃の切り札で存在感を示した。
 クロアチア戦後、普段はクールな三笘が「僕よりも強い気持ちを持ってる人に対しての申し訳なさ」で、人目をはばからずに泣いた。代表にキャリアをささげてきた先輩の思いは確かに受け取った。「代表を勝たせる存在になる。もう一回、4年間、行こうと思う」と誓いを立てた。
新たなW杯
 32チーム参加のW杯は今回限りで、次回からは48に拡大する。アジア枠も最大5から最大9に。本大会出場のハードルは下がるが、喜んでばかりはいられない。チームは厳しい予選を通じて成長する側面もある。欧州各国だけで争うネーションズリーグの定着や厳しい国際ルールなどで、ただでさえ近年は強豪国との強化試合が組みにくい。これで予選のレベルが下がれば、W杯8強に向けた強化はおぼつかない。アジア予選への関心低下も懸念される。代表人気の維持は容易ではなく、スポンサーや放送権収入に影響する恐れもある。
 2030年までのW杯4強、50年までのW杯優勝の目標を掲げる日本サッカー協会は現在、年間200億円規模の運営だが、大幅減収にも備え「100億円規模でも運営できるようにスリム化するべきだ」と意見する理事もいるという。先行きへの楽観は許されない。

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