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社説(3月11日)ミャンマー情勢 内戦終結へ働きかけを

 3年前にクーデターで権力を掌握したミャンマーの軍事政権は民主派や少数民族の武装勢力との戦闘が続く中、早ければ4月から徴兵制を実施する。昨年10月、中国との国境に近い北東部シャン州などで少数民族の3武装勢力が蜂起して以降、兵士の投降や脱走が相次ぎ、国軍は強制的に戦力を確保する必要に迫られた。国軍の弱体化を自ら認めたとも言える。
 徴兵制の実施は国軍が戦闘を続行する意思と受け取れるが、暴力の即時停止を求めてきた東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係正常化を図ろうとする動きも見られる。昨年ASEANとの交流開始50年を迎えたのを機に連携強化を確認した日本も軍事政権に内戦終結を強く働きかけたい。精力的に外交を続ける上川陽子外相(衆院静岡1区)がミャンマーに乗り込んで事態の打開を促してもいいのではないか。
 クーデター以降、軍事政権は国際社会から正式な政権として承認されず、孤立化している。ただ、今年に入って中国の仲介によって国軍は少数民族武装勢力との停戦に合意した。さらに、ラオスで開催されたASEAN外相会議に約3年ぶりに外務省高官を派遣し、内戦で困難な生活を強いられているミャンマー国民の人道支援計画を受け入れた。こうした変化は国軍の弱体化と無関係ではあるまい。
 男女とも徴兵の対象で、国民の反発は強い。戦場に駆り出されて同胞と戦うことに拒否反応を示すのは当然だ。兵役を逃れるため国外脱出を目指す若者が急増している。最大都市ヤンゴンにあるタイ大使館前にはビザ(査証)を求める長い列ができ、第2の都市マンダレーではパスポート(旅券)発行事務所に市民が殺到し、2人が圧死する惨事も起きた。
 徴兵制は2010年、民政移行前の軍政下で導入が決まったが、運用されずに志願制が続けられてきた。ただ、クーデター後は強制入隊させるケースが目立つという。民政下の15年と20年の総選挙で民主派リーダーのアウンサンスーチー氏率いる政党が圧勝したが、国軍は権力を強奪した。民意を無視した国軍への国民の反感はもともと強い。
 若者の間で動揺が広がっている現状に、軍事政権は現時点では女性を徴兵する計画はないと声明を出した。強権的な政治では国民を抑えきれなくなっている。国際社会の批判も無視できなくなっているのかもしれない。
 内戦で兵士だけでなく、子どもを含め一般市民の犠牲者も多く出ている。経済も疲弊し、国民の生活も苦しくなっている。民政復帰が望まれるが、今は国際社会が内戦終結に向けて尽力する時だ。

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