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【鳥山明さん死去】日本アニメ普及の土台に ポップな絵柄、次世代刺激 メディアミックス先駆け

 1日に死去した漫画家、鳥山明さんは「Dr.スランプ」のポップな絵柄で人気を博し、アニメ化されると「メディアミックス」の先駆けに。「ドラゴンボール」は世界的に大ヒットし、日本アニメが海外で普及する土台となった。アラレちゃん、孫悟空など鳥山さんが生み出したキャラクターたちは今も次世代の創作意欲を刺激し続けている。

鳥山明さんが関わった主な作品
鳥山明さんが関わった主な作品

 「あらゆる業界で活躍するクリエーター達の少年時代に、ドラゴンボール連載当時の興奮と感動が根付いているでしょう。その存在は、大樹です」。突然の死をいたんだのは「ONE PIECE(ワンピース)」の作者、尾田栄一郎さん。
 映画や動画配信サービスの実写版までメディアミックスが好調な「ワンピース」の生みの親も“鳥山チルドレン”の一人。「僕らは血液レベルで鳥山先生が大好き」
 日本の漫画、アニメ文化が世界中で受容される流れの中心に「ドラゴンボール」があったと指摘するのは、バンド・デシネと呼ばれるフランス語圏の漫画を紹介する翻訳家の原正人さん。「あか抜けたポップさが印象的な作風だった。輪郭線がはっきりした明瞭な絵は、バンド・デシネやアメコミ(米国の漫画ジャンル)にも通じ、欧州や米国の人々にとっても魅力あふれるうまい絵として受け入れやすかったのではないか」と振り返る。
 社会現象となったゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズではキャラクターデザインを担当。モンスターも愛らしく描いた。ゲームソフト大手「スクウェア・エニックス」でシリーズの開発にも携わったゲーム作家の渡辺祐真さんは「『スライム』が典型的ですが、目が大きく、プレーヤーと視線が合う。それがとても印象的でした」。そのデザイン故に「敵だと思えない」と、海外から不満の声が上がったほど。
 「ドラゴンボール」は1995年の連載終了後も新作アニメやゲームが作られ続けた。「NARUTO」「進撃の巨人」など「IP(知的財産)」を積極的に収益化していく流れの源流といえ、存在感は全く薄れない。
 バンダイナムコホールディングスによると、ゲームやフィギュアなど「ドラゴンボール」に絡む2023年3月期の国内外の売り上げは、前年比169億円増の1445億円に上る。鳥山さんの漫画「SAND LAND」のゲームも4月に発売を控え、同社は「驚きとともに非常に残念に思っている」とコメントした。
 岸田文雄首相肝いりの「新しい資本主義実現会議」でも半導体産業の輸出額に迫るコンテンツ産業への期待は高い。林芳正官房長官は「日本のソフトパワー発揮に極めて重要な役割を担ってもらった」としのんだ。

 レジェンドが去った 惜別の思い 国境越え
 アジアや欧米のメディアは8日、漫画家の鳥山明さんの他界を相次いで速報した。交流サイト(SNS)は「レジェンドが去ってしまった」「ドラゴンボールを使って生き返ってほしい」などと国境を越えたファンたちの惜別の思いにあふれた。
 「ドラゴンボール」は主人公の孫悟空が中国の古典「西遊記」に由来していたこともあって中国で高い人気を誇り、短文投稿サイト、微博(ウェイボ)には「孫悟空の名を世界に知らせてくれた」と感謝の投稿も。フランスのメディアも一斉に速報。「海外、特にフランスでの漫画と日本のアニメの人気に貢献した」と伝えた。
 (北京、パリ共同)

 命尽きるまで悟空のそばに
 アニメ「ドラゴンボール」シリーズで孫悟空役の声優、野沢雅子さんのコメント 信じたくない。考えたくないという気持ちで頭の中が空っぽです。それでも、お会いするたびに鳥山先生がおっしゃってくださった「悟空をお願いしますね」というお言葉を思い出すと、「私の命が尽きるまで悟空のそばにいよう」と気持ちを保つことができます。先生、空から私たちを見守っていてください。どうか安らかな旅立ちでありますように。

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