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社説(3月12日)アカデミーW受賞 日本の質の高さ示した

 映画界で顕著な業績を上げた監督や俳優らを表彰する米アカデミー賞の授賞式がハリウッドで開かれ、長編アニメーション賞と視覚効果賞にそれぞれ日本映画が選ばれた。
 ダブル受賞の快挙を喜びたい。日本映画の質の高さを幅広く知ってもらうとともに、底流にある日本文化への理解も広げる機会としたい。
 長編アニメーション賞は、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が選ばれた。宮崎監督作品の受賞は「千と千尋の神隠し」(2003年)以来で2度目。宮崎監督は14年に名誉賞も受けている。
 「君たちは―」は、宮崎監督の幼少期の体験などをベースに描かれた冒険ファンタジー。アカデミー賞の前哨戦とされるゴールデン・グローブ賞でもアニメ映画賞を受賞していた。宮崎監督は13年に引退を表明したが撤回、再び取り組んだ長編が受賞した。
 視覚効果賞は、山崎貴監督の「ゴジラ―1・0(マイナスワン)」に贈られた。1954年公開の「ゴジラ」(本多猪四郎監督)の70周年を記念して作られた。日本映画の視覚効果受賞は初。海外の大作に比べ、限られた予算の中で製作されたという。
 日本映画が積み重ねてきたミニチュア模型や合成映像を組み合わせたアナログな手法の「特撮」技術に、最新のデジタル化したVFX(視覚効果)技術を重ね合わせたという。序盤で木造船がゴジラに追われるシーンは浜名湖と遠州灘でロケが行われた。
 過去に視覚効果賞を受けた作品は「スター・ウォーズ」や「タイタニック」「ジュラシック・パーク」など、日本でも公開されてなじみのある大作が並ぶ。低予算にもかかわらず、それらの作品に列することで日本映画の技術の高さも世界に誇れよう。
 物語の舞台は太平洋戦争の終戦直後の東京で、全てを失い焼け野原から立ち上がろうとする人々の前にゴジラが襲来。連合軍に降伏して武装解除されたままの旧軍武器を使い、元特攻隊員など旧軍人らが立ち向かう。このストーリー展開も海外で分かりやすかったのかもしれない。
 アニメと特撮関連、宮崎作品とゴジラ作品―と、日本では定評のある作品がさらに磨き上げられ、映画の本場でも高く評価されたことになる。今後も日本らしさを生かした映画の発展を期待したい。
 アカデミー賞の作品賞や監督賞など7部門に輝いたのは原爆開発を主導した米国の物理学者の歩みを描いた「オッペンハイマー」。ウクライナに侵攻したロシアが核兵器使用をちらつかせて米欧諸国を威嚇するなど、現代社会で再び核の脅威が高まっている。核兵器反対や禁止の動きにつながることに期待したい。

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