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発達障害は診断名ではない 「言葉が独り歩き、親たち不安に」 小児科医/成田奈緒子さん

 文部科学省の2022年の調査によると、公立小中学校の通常学級に、発達障害のある児童生徒は8・8%在籍していると推定されている。しかし、「『発達障害』と間違われる子どもたち」などの著書がある小児科医の成田奈緒子さんは「発達障害という言葉が独り歩きして、親や教育関係者の不安を高めている」と指摘する。

子育てを巡る親の相談を受ける成田奈緒子さん(奥右)(子育て科学アクシス提供)
子育てを巡る親の相談を受ける成田奈緒子さん(奥右)(子育て科学アクシス提供)


 医学的に「発達障害」という診断名はありません。発達障害とは「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠陥多動性障害(ADHD)」「学習障害(LD)」などの総称で、脳の発達に関わる生まれ持った機能障害を意味します。
 文科省の調査結果だけを見ると、発達障害の可能性がある子どもは、06~19年の13年で10倍に増えたことになります。でもこの調査は専門家が行ったものではなく、学校で子どもを観察した教員が、主観的に「可能性がある」と評価した結果が反映されたものです。
 医学的な診断では、専門家が成育歴から綿密に調べ、診断基準に基づいて行動や情緒の障害を見極めなければなりません。しかし、医学的な診断がつかない子どもまで、ひとくくりに「発達障害の可能性がある」とされているのが現状です。
 そこには、子どもの問題がある行動に「迷惑をかけられている」「生活を脅かされている」と感じることを、安易に発達障害と結びつけようとする大人の視点が関係しているのかもしれません。
 「発達障害」という言葉は、幼い子どもの親には厳しく響きがちです。例えば「発達障害」とのレッテルを貼られることで親が不安に陥ってしまい、極端な場合、早期教育を強いたり、虐待が起きてしまったりすることもあるので、私は安易に診断はしません。
 成長過程にある子どもの脳は柔軟で、現在の状態がずっと続くわけではありません。仮に、音に敏感とか、何かにこだわりが強いという子どもがいたとしても、特に幼少期にはいろんな症候(心身に現れる症状)が目立ちやすいものです。10年後にどのように成長するのかは専門家にも予測できません。
 成長期の子どもの脳には、良質な睡眠が特に重要です。生活リズムが乱れていて十分に眠れていない子どもには、発達障害のような症候が現れることがあります。逆に、親のサポートで生活を改善し、質の高い睡眠が十分取れるようになると、気になる行動がなくなる子どもも多いのです。
 家庭で生活の改善を試みても、子どもに変化が見られず、生活に支障がある場合は、発達障害に対応していて信頼のできる医療機関に相談し、福祉の支援を受けることを検討してみるのも良いでしょう。

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