テーマ : 編集部セレクト

社説(3月20日)マイナス金利解除 中小への目配り十分に

 日銀がマイナス金利政策の解除を決めた。2016年から続いた異例の政策が終焉[しゅうえん]する。併せて、長期金利の上限を1%としていた目標を撤廃し、金利全般を抑制する長短金利操作も終えるとした。これらは国内金融政策を正常化させるための重要な一歩といえよう。ただ、賃金と物価の好循環が今後も回り続けるのか、特に地域経済を支える中小企業は、その不確実性を拭い切れているのか疑問を持たざるを得ない。
 超低金利下での暮らしが長過ぎたがゆえに、金利のある経済へ移行していくことに不安感を覚える人も少なくない。政府・日銀には、引き続き地方経済も含めた情勢把握を丁寧に重ね、政策などで十分な目配りを求めたい。
 短期の政策金利はこれまで、マイナス0・1%に置かれてきた。海外主要国との金利差拡大で円安が進行して製造業の復調を後押しした一方、不動産価格の高騰などの副作用も指摘されてきた。
 直近は、異次元の金融緩和策を修正に向けて好材料が際立った。24年春闘の集中回答日だった13日は、大企業が相次いで前年水準を上回る労働組合側の要求に満額回答した。静岡県内のスズキ、ヤマハ発動機、浜松ホトニクスなども、それぞれ高水準の内容となった。
 連合が15日公表した中間集計結果は、賃上げ率が5・28%と前年の中間集計(3・80%)を上回った。こうした結果は、今後本格化する地元中小企業の労使交渉にも好影響をもたらすのかもしれない。
 しかし中小企業は元々、大手に比べて労働分配率が高い。信用調査会社が県内325社を対象に1月実施した調査で、賃金の改善予定は57・2%だった一方、改善予定なしも13・8%あった。「中小に賃上げは厳しい」との声も上がった。
 大企業は、下請けの中小が賃上げしやすい環境づくりに寄与してほしい。今月は一部大企業に公正取引委員会が下請法違反の再発防止を勧告する事態が続いた。取引の適正化が求められる中でもコスト上昇分が価格転嫁されにくい面が残るのは、デフレ下の商習慣の根強さからであろう。取引上で優越的地位に立つ大手主導で解消しなければならない。
 物価高を上回る賃上げが中小まで波及し、国内総生産の5割強を占める個人消費が活性化してこそ、経済成長に力強さが伴う。賃上げの動きに今後息切れが生じれば、経済の好循環は持続性を失いかねない。企業は賃上げの原資を生み続けられるよう、変革を重ねて生産性を一段と引き上げたい。政府には企業の成長力を高める規制緩和などの支援が求められる。

いい茶0

編集部セレクトの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞