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中国で上野千鶴子著書が大ヒット 若い女性共感、社会現象に

 【北京共同】日本の女性学研究の第一人者である上野千鶴子さんの著作が中国で大ヒットしている。弱者が弱者のままで尊重されるよう訴える思想が共感を呼んだ。講演を開けば若い女性の申し込みが殺到し、社会現象とも言われる。ブームの背景に男性優位の社会構造への絶望や閉塞感の根深さが透ける。

北京市内の書店に並ぶ、中国語に翻訳された上野千鶴子さんの著書=2月(共同)
北京市内の書店に並ぶ、中国語に翻訳された上野千鶴子さんの著書=2月(共同)
東大の入学式で祝辞を述べる上野千鶴子さん=2019年4月、東京・日本武道館
東大の入学式で祝辞を述べる上野千鶴子さん=2019年4月、東京・日本武道館
北京市内の書店に並ぶ、中国語に翻訳された上野千鶴子さんの著書=2月(共同)
東大の入学式で祝辞を述べる上野千鶴子さん=2019年4月、東京・日本武道館

 「男性優先でよろしく」。北京の設計事務所の採用担当だった30代女性は、上司の指示に耳を疑った。女性はたとえ優秀でも残業に向かないというのがその理由だった。
 ずっと違和感があった。自身は大学院修了で日本への留学経験もある。なのに就職活動で聞かれるのは結婚や出産の予定ばかり。「頑張ってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています」。上野さんが2019年の東大入学式で述べた祝辞が胸に響いた。
 中国メディアによると、上野さんの著書はこれまでに20冊以上、中国語に翻訳・出版され、国内の総販売部数は数十万部に上る。22年には、国内最大級の書評サイトで上野さんが「今年の作家」1位に選ばれ、鈴木涼美さんとの共著「往復書簡 限界から始まる」は「今年一押しの本」に。北京大で開いたオンラインの講演には全国から聴講希望者が殺到した。
 ブームのきっかけは東大の祝辞だ。中国の動画サイトで100万回以上再生された。
 支持者の中心は20~30代の高学歴女性。男性と同じ条件で社会に出たはずなのに、就職や昇進などで男性優位の壁が立ちはだかる。北京大の古市雅子准教授は「平等に見えた社会」に行き詰まりを感じた多くの女性が、生きづらさの原因を平易な言葉で解明する上野さんに心酔していると指摘する。
 少子化が進む中国で、親は娘に結婚だけでなく、社会的成功への期待もかける傾向にある。上野さんは昨年6月、中国のジェンダー研究者とのオンライン対談で「娘も息子と同じように大切に育てられ、十分な教育を受けた結果、性差別をおかしいと感じるようになった」と分析した。

 上野千鶴子さん東大祝辞 上野さんは2019年4月、名誉教授を務める東大の入学式の祝辞で日本の性差別に言及し、話題を呼んだ。不正入試問題などに触れた上で「大学に入る時点で、既に隠れた性差別が始まっています。社会に出れば、もっとあからさまな性差別が横行しています」と主張。「頑張っても、それが公正に報われない社会があなたたちを待っています」「どんな世界でも生きていける知を身に付けて」と呼びかけた。祝辞には賛否の声が上がった。(共同)

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