【生殖法案】情報開示、範囲巡り異論 今国会提出へ最終調整
第三者の精子や卵子を使った不妊治療に関する法案について、超党派の議員連盟が今国会での提出を目指して最終調整に入った。議連が示した最新の法案たたき台は、生まれた子が遺伝上の親を知る「出自を知る権利」に一定程度配慮した内容。しかし開示情報が限られることや、対象を法律婚の夫婦に限ることなど、当事者の間ではさまざまな論点で異論がくすぶっている。
▽事実婚も
「このまま法律で(提供対象の)範囲を定められたら、その範囲のみに正しさができてしまう不安がある」。性的少数者の子育てを支援する一般社団法人「こどまっぷ」の長村さと子代表理事は昨年11月の記者会見で声を詰まらせた。たたき台では対象が法律婚に限定され、同性婚や事実上のカップルには閉ざされている。団体は対象範囲の拡大を求める要望書を議連に提出した。
議連副会長の古川俊治参院議員は「できる限り皆の合意が取れるところで法律を作っていきたい」と話した。
▽知りたい情報
たたき台では精子や卵子の提供時に、独立行政法人が氏名や住所、マイナンバーなどの情報を収集し、100年間保管する。子が18歳になった後に要望すれば、身長・血液型・年齢を開示。氏名など個人の特定につながる情報は提供者が同意した場合のみ開示するとしている。
提供精子で生まれた当事者の自助グループの石塚幸子さん(44)は、昨年12月に東京都内で開催されたシンポジウムで「これが私たちの求める情報なのか」と首をかしげた。石塚さんは23歳の時に自分が提供精子による人工授精(AID)で生まれたことを知った。
求めているのは身長や血液型以上に「人として感じられる情報」だとして、「出自を知る権利は子どもの権利であるはず。どんな情報を知りたいかは、子ども自身に決めさせてほしい」と訴えた。
▽一定の理解
たたき台は提供を受けた夫婦に対して、子が提供の事実を知ることができるような適切な配慮も求めている。これまでの調査で、早期の告知が親子間の信頼関係につながることが判明している。石塚さんは「家族の中に秘密があることが一番のリスクだ」と強調した。
提供卵子や精子で生まれた子を巡っては、2020年に民法の特例法で親子関係が明確になったのみで、出自を知る権利などは盛り込まれず、先送りにされてきた。
日本産科婦人科学会の加藤聖子理事長は、現状の内容では提供を受けた夫婦が子に出自を告知する際、提供者の性格や職業など必要な情報が不足していると指摘。一方で「一番の希望はたたき台をそのままにせず、早期に通すことだ」と述べ、今回のたたき台に一定の理解を示した。