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「ボーはおそれている」 衝撃の映像が満載、親子の物語【シネマアイズ】

 観客をあぜんとさせる物語で大きな衝撃を与えてきた鬼才アリ・アスター監督が、名優ホアキン・フェニックスを主演に迎え、新作スリラー「ボーはおそれている」を完成させた。想像の斜め上をいく映像が満載だが、描かれていたのは思い詰めた親子の物語だった。

☆(○の中に小文字のC) 2023 Mommy Knows Best LLC, UAAP LLC and IPR. VC Fund II KY. All Rights Reserved.
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 映画「ナポレオン」でフランスの英雄を演じたばかりのフェニックス扮するボーは、日常のささいなことでも不安を覚える極度の小心者。暴力がはびこる街に住んでいる。直前まで電話で話していた母親が突然死したらしいと連絡を受け、母の元へ駆け付けようとする。
 次々に発生する予想外の出来事に負けず、なんとか実家へ帰ろうと奮闘するボー。絶え間なく襲いかかる想像を超えた恐怖をやり過ごしながら、歩みを進めていく―。
 アスター監督の真骨頂である狂気の映像が絶え間なく続く179分間。ボーの気が変になったのか、映画の中の世界が崩壊したのか、見ている私たちが正気を失っているのかすらも分からなくなるような悪夢的な時間が続く。矢継ぎ早に繰り出される戦慄描写の合間には唐突に独特のユーモアが顔を出し、そのギャップに客席から思わず笑い声まで上がる始末。シュールさにも事欠かない。
 ぞっとさせられたり、気分が悪くなったりするような演出も目を引くが、根底に描かれているのは心が離れてしまった母と息子がどうにか関係修復を試みる過程にも思える。どこか宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」を想起させる情景も登場。荒唐無稽なストーリーにもかかわらずなぜかつい主人公に共感してしまう展開に、どんな状況でも失われることがないであろう普遍的な親子の絆を感じた。(朗)
 【アナザーアイ】母への愛憎が物語の主軸だが、その裏面には父性への恐れも。その象徴として登場する男根を模した怪物は、B級映画っぽさ満載で笑いを誘う。(沙)

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