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【4歳次女殺害】誕生前から支援も防げず 児相、一時保護回避

 東京都台東区の4歳次女を殺害したとして両親が逮捕された事件は、都児童相談センターなどが次女誕生前から、一家の養育環境を注視し支援していた。ネグレクト(育児放棄)や心理的虐待があると認識しつつ、生後8カ月以降は一時保護などの強制措置を取らず、最悪の結末に。事件はなぜ防げなかったのか。識者は一連の対応の検証が不可欠と強調する。

東京都児童相談センターが入る建物=15日午後、東京都新宿区
東京都児童相談センターが入る建物=15日午後、東京都新宿区

 ▽養育困難
 「母親は精神的に不安定で、父親は就労しながら家事が行き届かない部分があった。これまで支援してきたが…」。14日、報道陣に対応の是非を問われた都の担当者は苦渋の表情を浮かべた。
 父親の細谷健一容疑者(43)と母親志保容疑者(37)一家が千葉県流山市から台東区に転入したのは2016年10月。程なく同市を管轄する児童相談所から、夫婦げんかによる心理的虐待「面前DV」の通告が3回あったと情報が寄せられた。
 亡くなった美輝ちゃんが生まれる前で、兄と姉に対するものとみられる。児童相談センターなどは、母親が精神的に不安定で「養育困難」と判断。状況確認のため、18年6月から9カ月間で家庭訪問8回、電話連絡20回を重ねていた。
 児童相談センターは、19年1月の美輝ちゃん誕生以降も父母の面接を進めたが、2カ月後に衣類を燃やした放火容疑で母親が逮捕されたため、子ども3人を一時保護した。養育状況が改善されたとして兄姉の一時保護が解除されたのは同年7月。9月には保育所利用を条件に美輝ちゃんも家庭に戻した。
 都や区の担当者は当時の状況を、ネグレクトと心理的虐待と判断していたと説明。ただ「父親と連絡が取れ、子どもの健康状態に問題がないことを定期的に確認していた。家の中は片付けられていなかったが、食事が取れていない状況はなかった」と話す。
 ▽検証
 一方で、その後の養育状況には不可解な点も。美輝ちゃんは約3年半の間に、6カ所の保育所や託児施設を転園。重複して利用し、自宅より施設にいる時間の方が長い期間もあった。父親は転園の理由を金銭面や通園距離の問題と説明。父親の就労状況から、保育所に長時間いることが子どもの安全につながるとして、問題視されなかった。
 22年9~11月には、通っていた保育所から5回、顔や腕にたんこぶや引っかき傷があると報告があった。3歳だった美輝ちゃんに「どうしたの?」と聞くと「公園で」「車で」との答え。父親も「公園で転んだ」などと回答に矛盾はなく、虐待によるものではないと判断した。区の担当者が最後に美輝ちゃんに会ったのは22年11月。事件は4カ月後に起きた。
 児童虐待問題に取り組む「子どもの虹情報研修センター」(横浜市)の川崎二三彦センター長は「虐待の態様や種類はさまざまで判断が難しい。保護者が子どもに話を合わせるよう指示している可能性も考慮し、結論を急がず慎重に考える必要がある」と指摘。「一時保護解除のタイミングが適切だったかや、その後の児相と区の対応を検証する必要がある」と話している。

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