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障害ある赤ちゃんに家庭を 「架け橋」へ特別養子縁組 奈良県のNPO法人

 ダウン症のような障害が理由で、親の養育を受けられない。こんな赤ちゃんと新たな家庭との「架け橋」になろうと、奈良県のNPO法人「みぎわ」が特別養子縁組のあっせんに取り組んでいる。願うのは「どんな子どもにも居場所を」。活動を始めた2018年以降、14人が新たな家族に迎え入れられた。

ダウン症の大和ちゃん(左)を家族に迎えた松原宏樹さん=2023年11月、奈良市
ダウン症の大和ちゃん(左)を家族に迎えた松原宏樹さん=2023年11月、奈良市

 創設者は松原宏樹さん(55)。教会の牧師を務める傍ら、望まない妊娠に悩む女性の相談窓口を設けた。初めて受けたのが、出生前診断で胎児に障害が見つかったという女性から。「産んでも殺してしまう」という衝撃的な言葉で苦悩の深さを知り、障害児を持つ親の相談に力を入れるようになった。
 寄せられる年間約50件の大半は障害が絡む。「両親から『人間でないものを妊娠した』と言われた」といった、人の命に優劣を付ける「優生思想」を根強く感じさせる内容もある。うつ病になる妊婦も少なくない。
 相談を踏まえて育てられないと判断すれば、新たな受け入れ先を探す。特別養子縁組は戸籍上の親子となるため、養育を希望する家庭とも面接を繰り返す。
 松原さん一家も、ダウン症の大和ちゃん(5)を迎えた。実母の母子手帳は「会える日を楽しみにしているね」と出産を待ちわびる記述であふれていたが、出生前検査を境に真っ白に。生まれつきの心臓疾患で医療ケアが必要だった事情もあり、引受先は見つからなかった。
 松原さんは「やまちゃん」と呼ぶ新たな家族との日々を通じて「家庭が豊かになった」と胸を張る。成人した実子たちもわが子のようにかわいがっており「家族を大切にする気持ちを引き出してくれている」と目を細める。みぎわの理事長は22年6月に退任し、今は活動の相談に応じる。
 障害がある子どもは通院やリハビリが必要なケースが多く、預けられる保育所も少ないため、子育ての負担が大きくなりがちだ。こども家庭庁によると、特別養子縁組による行政からの経済的支援はない。松原さんは「家族だけが重荷を背負うことになる。ケアが必要な子でも社会に属せる体制づくりが必要だ」と訴えている。

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