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【能登半島地震1カ月】復興スケジュール示せ 支援は人に寄り添って 兵庫県立大大学院教授 青田良介

 能登半島地震から1カ月。石川県では約1万4千人が避難生活をしている。4万棟を超える住宅が被害を受け、土砂災害からの道路の復旧、断水の解消も道半ばだ。防災のため、そして復興に向けて何をすべきか。2人の識者が論じた。

青田良介・兵庫県立大大学院教授
青田良介・兵庫県立大大学院教授
石川県輪島市の土砂崩れがあった集落=1月4日
石川県輪島市の土砂崩れがあった集落=1月4日
青田良介・兵庫県立大大学院教授
石川県輪島市の土砂崩れがあった集落=1月4日

   ◇   ◇
 石川県の被災地に2度入った。どの市町も規模が小さく、職員が足らない。職員も被災したために、災害時の緊急態勢に移行するのに少し時間がかかったようだ。
 過疎と高齢化が進む地域だけに、避難所での生活が長引くなどして災害関連死の増加が懸念される。上水道、道路の復旧に時間がかかる現状を考えると、ホテル、旅館に移る2次避難も必要だ。
 その際、コミュニティーでのつながりを考慮し、まとまって避難してもらうよう注意したい。仕事などの理由で被災地にとどまる人もいる。避難した人、残った人の被災状況に応じた寄り添い型の支援が欠かせない。
 子どもに勉強を教える大学生ボランティアなどは、行政が交通費や宿泊費を負担すると、全国から応援しやすくなる。
 こうした被災者へのきめ細かなソフト的な支援が、行政はあまり得意でない。阪神大震災以降、人の支援にたけたNPOなどがあるので、協力して進めるべきだろう。
 被災自治体には、外部の多くの自治体が支援している。評価できるが、自治体という同格の組織同士のため、リーダーシップが取りづらい。
 効果的な支援のためには、少なくとも災害直後はもう一段上の「参謀」が求められる。自治体以外の応援も含め統括し、首長にアドバイスできる国の専門職を各被災自治体に派遣する制度の創設を提案したい。プロパー職員として、災害対応に特化したプロ集団が必要だ。
 今の国の仕組みでは、内閣府に置くことになるが、将来的には防災省や危機管理庁の創設につなげるのも一策である。災害の発生頻度を考えれば、年に何回かは被災地でイニシアチブを取る。その経験も踏まえ、平時には自治体職員の研修などの役割を担うのである。
 地震から1カ月となり復旧、復興の議論も始まっている。人口減少下の日本で、災害後の過疎地域の再生は全国どこでも直面する課題と言える。災害を機に、地域の衰退ありきではなく、次代につながる前向きな視点をどう復興に盛り込むかが問われる。
 阪神大震災では、行政と専門家、支援者が一緒に現場を回り、把握したニーズを政策につなげる組織や、政策を実現する復興基金を準備した。東日本大震災では、被災した水産業者を同業者が支援している。こうした経験知を活用できる仕組みをつくるべきだ。
 被災者は、避難先から仮設住宅など一時的に住む場所に移っていく。その際に最も知りたいのは「今後、自分たちや被災地はどうなるのか」だ。復興計画も作成されるだろうが、被災者にそれを待つゆとりはない。
 大ざっぱでもいいので、復興のスケジュールを示すべきだ。過去の経験から3年、5年というタイミングで、復興住宅などの建設、なりわいの再建、復興まちづくりなどがどれぐらい進むかはおおよそ見当が付く。被災経験ある自治体の意見を聴くのも効果的である。
 それらを参考に被災した石川県、市町が国の協力を得て、大まかな計画を示す。内容は進捗状況に応じて随時変えればいい。時間軸が見えることで被災者もいつ地元に戻れるのか、生活をどう再建していくのか、めどを立てることができる。
   ×   ×
 あおた・りょうすけ 1960年兵庫県生まれ。神戸大博士(学術)。専門は防災行政、被災者支援政策。共著に「災害に立ち向かう人づくり」。

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