あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 読み応えあり

【韓国の対中貿易】韓国、貿易「脱中国」 31年ぶり赤字、多角化へ

 韓国の対中国の貿易収支が昨年、31年ぶりに赤字となった。中国景気の低迷で輸出が減ったためだが、背景には中国企業の技術力やブランド力が向上し、韓国製品が売れにくくなったことがある。経済の屋台骨である輸出の不振を脱すべく、米国などへの多角化を目指す。

韓国南部・釜山港のコンテナ船=2023年10月(共同)
韓国南部・釜山港のコンテナ船=2023年10月(共同)
韓国の対中貿易推移
韓国の対中貿易推移
韓国南部・釜山港のコンテナ船=2023年10月(共同)
韓国の対中貿易推移

 韓国の産業通商資源省によると、昨年の対中輸出は前年比20%減の1248億ドル(約18兆4千億円)。最大品目の半導体が市況悪化で約3割減ったほか、ディスプレーも3割強、鉄鋼も2割弱減少した。輸入は8%減の1428億ドルで、約180億ドルの赤字となった。
 韓国は製造業を中心とする輸出主導型の経済で、国内総生産(GDP)に占める輸出の割合は近年、4~5割に上る。中でも中国の存在感は圧倒的で、輸出額に占める国別シェアは過去約20年にわたって1位。昨年は19・7%を占めた。
 ただ、かつて中国市場で人気を誇ったサムスン電子のスマートフォンや現代自動車も、今はシェアが1%ほどとされる。中国メーカーが自力で作れるようになったためだ。韓国政府関係者は「既に中国企業の技術力は相当なものだ」と語る。
 対中ビジネスを見直す動きもあり、現代自は昨年末、中国・重慶の工場を売却した。中国での販売不振や人件費高騰が影響したとみられる。
 輸出先で存在感を増しているのは米国だ。対米輸出で昨年12月は単月で20年ぶりに中国を抜いたほか、年間でも肉薄。韓国の半導体や自動車メーカーが米国に工場を建設するのに合わせて、設備の輸出が急増したという。親米の尹錫悦政権下、企業が積極的な対米投資をしている背景もある。
 一部品目の中国依存の解消も課題だ。電気自動車(EV)などに使われ、政府が重要産業と位置付けるバッテリーの一部材料の輸入先は22年、中国が約9割。ディーゼル車の排ガス浄化に使われる車両用尿素水の原料となる尿素も9割超で、昨年末には中国が輸出手続きを中断したことで懸念が広がった。
 政府は185品目の特定国への依存度を30年までに5割以下にする目標を掲げ、調達先の多様化や国産化を急ぐ。
 ただ、対立する米中の間でバランスも求められそうだ。仁川大の李賢泰教授(経済学)は「韓国が米国寄りになりすぎると、中国が資源を武器に圧力をかける恐れがある」と指摘。財閥のSKグループの崔泰源会長も昨年7月の記者会見で「巨大な中国市場を放棄する選択肢はない」と安易な脱中国をけん制した。(ソウル共同=富樫顕大)

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む