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社説(3月17日)「再出発」前にけじめを  きょう自民党大会

 自民党は2024年の党大会を17日に東京都内で開く。政治資金パーティーを巡る派閥の裏金事件で国民の強い政治不信を招き、12年に政権復帰して以降、最も厳しい逆風の中での党大会になる。岸田文雄首相が総裁演説で何を語るかが焦点だ。
 党大会に先駆けて開いた16日の全国幹事長会議で、岸田首相は「命がけで党再生に努力していきたい」と述べた。だが、今の状況は自民への支持が急落しているというだけでなく、日本の政治そのものへの国民の信頼が失われつつあることを認識すべきだ。党再生を語る前に、事件に対する本当の責任の所在を明確にして相応のけじめをつけなければ、信頼回復の出発点に立つこともできまい。
 大会を前にした幹部の発言には失望するばかりだ。麻生太郎副総裁は派閥の会合で「再出発と位置付けられるような党大会となることを期待している」と述べ、茂木敏充幹事長も党内会合で「党大会で全く新しい自民党に生まれ変わる強い決意を示さねばならない」と呼びかけた。聞こえはいいが、早々に事件の幕引きを図りたいとの思惑が見え見えだ。
 裏金づくりの真相解明は検察の捜査が終結して以降、自民の手では全く進んでいないと言っていい。衆参両院がそれぞれ開いた政治倫理審査会を通じて明らかになったのは、安倍派幹部らの責任感の欠如と真相を解明する意思が全くないことだけだ。岸田首相は政倫審開催を巡る混乱を受け、自ら審査に出席する奇策に打って出たが、裏金づくりの経緯など国民が知りたいことは何一つ分からなかった。これでは信頼回復などあろうはずもない。
 安倍派幹部らへの厳しい処分を求める声は党内にもあるが、岸田首相は及び腰に見える。真相が未解明では適正な処分はできないのは確かだ。ただ、もし党内の反発を恐れて処分に消極的だとしたら、「党再生」など語る資格はない。真相解明にリーダーシップを発揮して責任の所在を明確にした上で、厳しい処分を課すのは岸田首相が果たすべき最低限の責任だ。
 党大会では、党則と規律規約、ガバナンス・コード(統治原則)の改正案を諮る。党則改正案は「旧来の派閥」の存続を禁止する一方、代替的に位置付けられる「政策集団」を明記。政治団体の会計責任者が政治資金規正法違反で逮捕・起訴された場合、議員に離党勧告できるようにする。派閥政治が事件の背景にあるのは間違いないが、これらの党則改正のみで再発防止が図れるとは思えない。政治資金規正法の思い切った罰則強化など法改正の議論を深めて実現しなくてはならない。

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