テーマ : 編集部セレクト

社説(3月7日)震災で進む人口減 奥能登の支援に全力を

 能登半島地震の発生から2カ月が経過し、被災地では防災ボランティアの活動がスタート、応急仮設住宅への入居も一部で始まるなど、生活再建の歩みが動き出した。
 一方で石川県内ではいまだに1万人以上が避難生活を送る。電気や通信は復旧したものの1万8千戸以上で断水が続く。上水道はもちろん、下水道も使えない状況では日常生活の維持は難しい。全国の自治体などから応援を受けて作業が進むが、全面復旧までは時間がまだかかりそうだ。
 県がまとめた人口推計によると、輪島市や珠洲市など奥能登地域2市2町からの転出者数は今年1月、前年同期の4倍以上になった。高齢化と人口減少が進む被災地で震災が過疎化に拍車をかける実態が浮かび上がっている。
 生活再建を加速しないと、地域を一層衰退させることになる。山が多い半島で交通路が限られるという地形上の制約があるせいなのか、復旧がなかなか進まない印象を受ける。加えて対応が急がれるのは「なりわい」対策だ。倒壊家屋の撤去やそれに伴う災害がれきの処理も求められる。政府と行政は支援に全力を挙げてもらいたい。
 奥能登地域の転出者数は計397人、昨年1月は93人だった。輪島市が180人、珠洲市が112人など前年同期の5倍以上。被災に伴う転居が相次いだためとみられる。もともと奥能登地域は高齢化が進み、昨年10月時点の年齢別推計人口で珠洲、能登、穴水の1市2町は65歳以上が人口の半数を超えている。
 人口流出が進み、生産年齢人口(15~64歳)が減少すると、地域復興の担い手が不足する。2011年の東日本大震災では復興まちづくりに時間がかかり、沿岸部の人口流出を抑制できなかった。同じ轍[てつ]を踏んではならない。
 地震によって奥能登地域を中心に石川県では住宅の全壊が約7700戸、一部破損を含めると約7万7千戸近くが被害を受けた。災害関連死を除く地震犠牲者の多くが住宅倒壊によるとされる。
 1日現在の県まとめで、体育館など1次避難所に約5400人、旅館やホテルなど2次避難所に約4600人が身を寄せている。こうした避難者のほか、在宅のまま被災生活を続ける人もいる。仮設住宅に入居した人もいて支援方法も多様化している。
 ストレスのかかる不自由な生活が続く中、懸念されるのは関連死だ。東日本大震災や16年の熊本地震では関連死の約8割が3カ月以内に発生したとされ、警戒が必要だ。避難所だけでなく住宅への目配りも欠かせない。病院や医療関係者も被災して地域医療が逼迫[ひっぱく]する中、手厚い支援で関連死を防いでもらいたい。

いい茶0

編集部セレクトの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞