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視座(3月18日)改善進まぬ静岡県の男女格差指数 働く環境の整備急務

 都道府県別の男女平等度を政治、行政、教育、経済の4分野で分析した2024年の「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」が公表され、静岡県は政治が全都道府県中16位、行政32位、教育37位、経済は42位だった。前年に比べ、政治、行政、教育はほぼ横ばい。前年に全国最下位だった経済はやや上昇したものの、東京、名古屋の中間に位置し、全国10位の人口を有する県としては深刻に受け止めるべき結果だろう。
 特に経済分野の低迷は、本県の主要課題である人口減少に密接に結びついていると考えられる。かねて本県は、就職や進学を契機にした若年女性の県外流出が多いと指摘されている。少子高齢化の進展で人手不足が顕在化する中、大企業を中心に女性が働きやすい環境の整備が進む。そうした企業が集中し、生まれ育った土地にも近い首都圏への就職や進学を県内の若年女性が選択するのは自然な流れだ。県内の行政や企業はこの状況にもっと危機感を強め、男女格差解消に注力する必要がある。
 ジェンダー・ギャップ指数は世界経済フォーラムが国別に2006年から発表している。都道府県版は上智大の三浦まり教授らがつくる「地域からジェンダー平等研究会」が公表し、ことし3年目となった。指数「0」が完全不平等、「1」が完全平等。国別の23年は146カ国を対象とし、アイスランドが4分野全体の指数0・912で14年連続のトップとなった。日本は0・647で125位。過去最低だった。政治と経済が足を引っ張っている。本県はその日本の中でも低位であることを、まずは認識すべきだろう。
 都道府県版は4分野30指標で分析し、経済は、就業率の男女差▽共働き家庭の家事・育児などの時間の男女格差▽企業や法人の役員・管理職の男女比|など7指標で分析した。本県の指数は0・415。1位の鳥取県は0・452。本県は7指標のうち、就業率の男女差などは比較的小さいが、フルタイムの賃金などの格差が大きい。管理職が男性に偏っていることが一因で、中小製造業が多い産業構造が影響しているという。
 一方、総務省の報告によると、本県は23年、東京圏への転出が転入を7千人近く上回る「転出超過」だった。39歳以下、特に20代の転出超過が顕著だ。県の過去数年の分析では女性の比率が高く、県内に「やりたい仕事や給与水準の高い仕事がない」が理由の上位に挙がる。
 少子高齢化の進展と人手不足の深刻化で、女性が相応の役割を担えなければ、早晩、社会が回らなくなる。単に仕事と子育てを両立できるだけでなく、結婚や出産をし、子育てをしながらでも、望めばキャリアアップして管理職や役員になれる環境が不可欠だ。企業は長期的視点で就労環境の整備と女性の採用を進め、管理職や経営陣を担えるよう育成、登用する必要がある。並行して家事・育児負担の男女格差解消のため、支援制度の充実や社会全体の啓発に力を入れなくてはならない。
 都道府県版の行政分野は鳥取県が他を引き離し、3年連続の1位だった。片山善博元総務相が1990年代以降に同県の総務部長や知事を務め、男女格差の解消に注力したことが要因とされ、リーダーシップの重要性が分かる。本県でも知事や市町長、企業経営者らが危機感を共有して改革の先頭に立ちたい。
(論説委員長・橋本和之)
〈お断り〉4月から随時掲載とします。

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